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最終更新日:2017.4.4
 高齢者の食欲不振



   高齢者の食欲不振とは 

  年齢の上昇にともない,食事量が減少す
 る事があります. 徐々に食が細くなること
 もあれば, ある日突然食べられなくなるこ
 ともあります. 十分に食べることが出来
 なければ, 体力が低下し健康が損なわれ
 てしまうこともあります. また急激な体
 重減少(特に612カ月以内に5%以上の体重減少)を認める場
 合は,なんらかの病気が存在しているかもしれません. 
  いっぽうで, 高齢者の食欲不振は,原因を特定しにくいことが
 多いとされています. それでは、食欲不振の原因にはどのような
 ものがあるでしょうか?

 

      index
 1. 疾病要因 
 2. 薬の副作用
 3. 社会的要因
 4. 精神・心理的要因
 5. 生理的要因
 6. 反復嚥下テスト(RSST)
 7. 食欲不振に対する考え方
 8. 方針


 


  すべての年代で起こりうる食欲不振の原因


 疾病要因.
食欲不振と病気

  ・消化管の病気
    胃腸の病気(炎症性疾患,便秘,
    肝疾患,癌通過障害)など.
  ・心臓や肺の病気
    低酸素血症に伴う呼吸中枢の刺激
    末梢からの迷走神経刺激など. 
  ・脳の病気
    脳圧亢進など
  ・腎臓の病気  
    尿毒症,代謝性アシドーシス,電解質異常など
  ・内分泌系の病気
    甲状腺機能低下症, 副腎機能不全など.



  飲んでいる薬の副作用


食欲不振と薬  ・強心薬(ジギタリス中毒)
  ・気管支拡張薬(アミノフィリン中毒)
  ・認知症薬(ドネペジル)
  ・痛み止め(NSAIDs)
  ・抗うつ薬(SSRI)
  ・貧血薬(鉄剤)  
  ・骨粗鬆症薬(カルシウム・ビタミンD製剤など)
  ・健康食品やサプリメントの過量摂取

    → 止められない場合が多い



  社会的要因


食欲不振と社会的要因  ・独居や老老介護のため、食事の買い
   物や料理のサポートが不足してる.
  
   → サポート体制が整えば食べられ
     るようになる. 


 

  精神的・心理的な要因

食欲不振と閉じこもり
  ・認知機能の低下により、満腹感が継続し食欲の
   低下・消失をおこす.
  ・変化のない生活や閉じこもりによる精神的不安
   定さから、食欲の低下・消失をおこす.




 ■ 生理的な要因



 運動不足や睡眠不足
食欲不振の生理的要因

  ・不規則な生活習慣により, 消化機能
   が低下し食欲の低下,消失をおこす.

 味覚の低下

  ・亜鉛不足などより味覚が低下し, 特に
   塩味や甘味の感覚が鈍くなり,濃い味付けを好むようにる.
   味覚の低下が好みの変化につながり,食欲の低下・消失をお
   こす. 

 口腔内の状態の悪化

  ・入れ歯の不具合, 口腔内の乾燥や荒れ,歯肉の腫れなど口腔
   内の状態の悪化により,痛みなどが生じ食欲の低下・消失をお
   こす.

 便 秘

  ・噛む力が弱くなり,柔らかいものを好んで食べるようになる.
   その結果栄養バランスが偏り,食物繊維不足による便秘など
   に続き食欲の低下・消失をおこす.

 宿 酔

  ・
高齢になるほど血中アルコール濃度が上昇しやすくなり,
   酒に弱くなる. 若い頃と同じように飲酒を続けると宿酔(二
   日酔い)が続き,食欲の低下・消失をおこす.

 上手に飲み込めない・誤嚥

  ・のみこみ動作(嚥下)に問題があるために,食欲の低下・消
   失をおこす.

                 
反復唾液嚥下テスト(RSST)


 ・嚥下障害の簡易試験です.
  中指でのど仏(甲状軟骨)を、人差し指で舌骨を触知します. 
  唾を飲み込んだとき“のど仏“が指をしっかり越えたら一回と
  カウントします. 動いただけではカウントしません 
  30秒間に何回飲み込めるか数えます.
   ‣ 12回の場合  :上手に飲み込めていない可能性が高い.
   ‣ 3回以上の場合 :上手に飲み込めている可能性が高い.
    (ただし認知症の方は、やり方の理解ができていない
     可能性があります)

    反復嚥下テスト



  食欲不振に遭遇した場合の考え方


 高齢者の食欲不振に遭遇した場合, 上述のごとく消化管疾患, 心疾患, 肺疾患, 内分泌疾患などの病態とともに, 加齢の存在を無視できません. 近年の検査・治療の進歩には目を見張るものがあります. いっぽうで高齢者は体力の低下や認知症を伴っていることが多く, 検査や治療に難渋することがあります. 検査や治療の利点や欠点を理解してた上で, 可能な限り本人の意思を確認し, 家族と相談しながら方針を決定していくことが重要です.




  高齢者の食欲不振に対する方針


 健康状態に問題ない場合.

食欲不振と精密検査
 ・疾病要因を検索するために, 積極的に
  検査をします.
 ・内視鏡、カテーテルなど侵襲を伴う検査
  も視野に入れます.



 健康状態に問題がある場合.


 ・ 負担にならない範囲内で検査します.
   (レントゲン・血液検査・心電図・
    尿検査など). 
食欲不振と感染症 ・ 感染症(呼吸器感染,消化管感染,
   尿路感染など)が原因の場合、適切な
   抗菌薬の使用ですみやかに食欲が改善
   する事があり,積極的に介入します.
 ・ 感染症が否定され疾病要因が考えられ
   た場合は,ご本人や家族と相談の上で,注意深い経過観察と
   する事もあります. 

  

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