■ 子宮頸がんのワクチン
子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV)
❑ 子宮頸がんは年間約9,800人が罹患し、約2,800
人が死亡しています。
❑ 50歳未満の若い世代での罹患の増加が問題となっ
ています。
❑ 子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイル
ス(HPV)の感染が原因とされています。
❑ HPV感染後、90%以上は2年以内にウイルスが自然消失するとされてます。
❑ 持続感染すると、数年~数十年かけて高度な異形成や、子宮頸がんに至る
とされています。
■ HPVワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン)
◇ HPVワクチンの効果
❑ HPV感染や子宮頸部の異形成予防効果は確認されて
います。
❑ 有効性は、一定期間持続することが報告されてい
ます。
❑ 推計では、HPVワクチンを導入により、日本の子宮
頸がんの/死亡者を40~70%程度減らすことが出来
ると報告されています。しかし、現段階ではがん予防効果は、証明されて
いません。
❑ がん検診と予防接種により、子宮頸がんの高い予防効果が期待できるとさ
れてます。
◇ HPVの感染状況
National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)
❑ 性交渉の経験がある女性のうち50%~80%は、HPVに感染していると推計
されています。
◇ 子宮頸がんのHPV16/18検出率
❑ 子宮頸がん患者のHPV 16/18型保有率は、50~70%程度と報告されて
います(報告ごとに成績が異なっています)。
❑ 子宮頸がん患者のHPV 31/33/45/52/58型保有率は、25~30%程度と
報告されています。
◇ HPVワクチンの効果
❑ 90%の女子へのHPVワクチン接種。
❑ 70%の女性が適切に生涯で少なくとも2回の検診を受ける
こと
❑ 90%の子宮頸部の病気になった女性が、適切なケアを
受ける。
上記により、今世紀中に子宮頸がんは排除が可能である
とのシミュレーションがなされています。
HPVワクチンの有効性 (日本)
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新潟県 |
ワクチンを接種した20歳~22歳の女性において、HPV16/18型に感染割合が
有意に低下。 |
秋田県・宮城県 |
20〜24歳の女性の異型細胞が見つかる割合が、ワクチン接種者で有意に低下。
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松山市 |
ワクチン接種世代で、20歳時の検診において前がん病変が有意に減少。 |
日本対がん協会の
データを用いた研究 |
20〜29歳の女性で子宮頸部の前がん病変と診断される割合が、ワクチン接種
者で有意に低下。
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持続効果の評価
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2価HPVワクチン |
・1回目ワクチン接種から最長9.4年後までの検討で、HPV16/18型関連の持
続感染や前癌病変に対し、予防効果が認められています。 |
4価HPVワクチン |
・16~26歳を対象とした海外第Ⅲ相臨床試験のフォローアップ試験
3回接種後から最大14年(中央値:11.9年) HPV16/18型関連疾患の発生は
ありません(延長試験進行中)。
・海外第Ⅲ相臨床試験のフォローアップ試験の中間結果
HPV6/11/16/18型に関連した疾患の発生がありません。
24~45歳の女性を対象としたフォローアップ(3回接種後から最大10.1年間)
9~15歳男女を対象としたフォローアップ(女性:3回接種後から最大10.7年)
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9価HPVワクチン |
・海外第Ⅲ相臨床試験のフォローアップ試験
16~26歳女性:3回接種後から最大9.5年間有効性が持続。
9~15歳女性:3回接種後から最大8.2年間.有効性が持続.
引き続き検討が行われています。
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◇ HPVワクチンの注意事項
❑ ワクチンは、HPVの感染を予防するもので、すでに
HPVに感染している細胞からHPVを排除する効果は
認められません。
❑ 初めての性交渉を経験する前に接種することが最も
効果的です。
❑ スケジュール通りに接種ができない場合、2回目接種は初回接種から少なく
とも1力月以上、3回目接種は2回目接種から少なくとも3カ月以上間隔を置
いて実施してください。
❑ 1年以内に3回の接種を終了することが推奨されます。
❑ 接種スケジュールの途中で妊娠が判明した場合は、出産後まで接種を延期し
てください。出産後に2回目、3回目を接種してください。
❑ 授乳婦:本剤に対する抗体が、乳汁中へ移行するかは不明です。
■ HPVワクチン定期接種とチャッチアップ接種
◇ 定期接種の対象
❑ 小学校6年生(12歳)~高校1年生相当(16歳)の女子
◇ キャッチアップ接種の対象
❑ 令和4(2022)年4月~令和7(2025)年3月の3年間、HPVワクチンを公費
で接種できます。
❑ 次の2つを満たす方が、あらためて接種の機会をご提供する対象となり
ます。
①平成9年度生まれ~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~
2006年4月1日)の女性
②過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない
・平成18・19(2006・2007)年度生まれの方は、通常の接種対象の年齢(
小学校6年から高校1年相当)を超えても、令和7(2025)年3月末ま
で接種できます。
・過去に接種したワクチンの情報(ワクチンの種類や接種時期)については
、母子健康手帳や予防接種済証等でご確認ください。
❑ 接種の対象に該当する方は、令和4(2022)年4月~令和7(2025)年3月の
3年間、HPVワクチンを公費で接種できます。
■ HPVワクチンの安全性
◇ 日本での評価
❑ 厚生労働省専門部会(2017年11月)
➢慢性の痛みや運動機能の障害などHPVワクチン接
種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチン
との因果関係は報告されておらず、これらは機能
性身体症状と考えられると発表されています。
❑ 厚生労働省研究班(祖父江班)の全国疫学調査
(2016年12月)
➢HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告
されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12〜18歳女子
では10万人あたり20.4人)存在すること、すなわち、「多様な症状」がHPV
ワクチン接種後に特有の症状ではないことが示されました。
❑ 多くの臨床研究を統合解析したCochrane Review
➢HPVワクチン接種によって局所反応(接種部位の反応)は増加するものの、全
身的事象や重篤な副反応は増加しないと報告されています。
◇ 世界での評価
❑ 欧州医薬品庁(EMA)[2015年11月]
➢HPVワクチンとCRPSの因果関係はないと公表
❑ WHOのGACVS [2017年6月]
➢HPVワクチンとCRPS、POTS、疼痛および運動
障害を含む様々な症状との因果関係は認められ
ない
❑ 米国疾病予防管理センター(CDC)。
➢CRPS、POTS、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群と、HPVワクチンとの因果関
係など検出されていない。.
[ HPVワクチン接種後の有害事象] |
◆複合性局所疼痛症候群(CRPS):
重度で長期間持続する神経障害製疼痛、自律神経障害(発汗異常など)、運動機能
異常(筋力低下、ジストニア)、萎縮性変化(皮膚・骨萎縮・脱毛、関節拘縮) |
◆起立性調節障害(OD):
朝起きられない、立ちくらみ、動機、息切れ、睡眠障害、食欲不振、腹痛、頭痛、
倦怠感など。 |
◆慢性疲労症候群(CFS):
重度の疲労感、微熱、筋力低下、筋肉痛、関節痛、精神神経症状、睡眠障害 |
◆予防接種ストレス関連反応(ISRR)
ワクチンの種類には関係なく、接種前・接種時・接種直後の急性ストレス反応
としてソワソワ感、不安感、呼吸困難感・過換気、心拍数増加、血管迷走神経
反射として浮動性めまいや失神
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■ HPVワクチン接種の実際
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