■ 片頭痛
◇片頭痛とは
❑ 有病率 : 間8.4%(前兆なし;5.8%
前兆あり;2.6%)
❑ 20~40歳台の女性に多い。
❑ 未成年の有病率:
・高校生;9.8%
・中学生;4.8~5.0%
・小学生3.5%
◇片頭の誘発・増悪因子
❑ 精神的因子:ストレス、ストレスからの開放、疲れ
睡眠の過不足
❑ 内因性因子:月経周期
❑ 環境因子:天候の変化、温度差、におい、音、光
❑ ライフスタイル因子:運動、欠食、性的活動、旅行
❑ 食事性因子:空腹、脱水、アルコール、特定の食品
◇片頭痛の診断
「下記を満たす発作が5回以上ある」場合、片頭痛と診断 |
頭痛発作の持続時間
(未治療か治療無効時 |
4~72時間。 |
少なくとも2項目を満たす |
片側性(頭の片側におこる) |
拍動性(ズキンズキンとする痛み) |
中等度~重度の頭痛(我慢できない、仕事に支障) |
日常生活動作(歩行や階段昇降)で頭痛が増悪。
あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける。 |
少なくとも1項目を満たす |
頭痛が起こると吐き気を起こす。 |
光や音に敏感になる。 |
◇片頭痛の急性期治療
アセトアミノフェン
❑ 安全性が高く安価。 軽~中等度の片頭痛では第一
選択薬。効果は限定的。
NSAIDs
❑ 安全性が高く安価。 軽~中等度の片頭痛では第一選
択薬。効果は限定的。
トリプタン
❑ 軽~中等度の片頭痛で過去にNSAIDsが効果なかった片頭痛。
❑ 日常生活に支障をきたす片頭痛
❑ NSAIDsとの併用も可。
❑ 服用のタイミング:頭痛が軽度か、発作初期(発症より1時間くらいまで)
❑ 片麻痺性片頭痛野急性期には使用しないことを推奨
薬剤名 |
剤形 |
用量(㎎) |
Tmax
(時間) |
T1/2
(時間) |
スマトリプタン |
イミグラン®
|
錠 |
50 |
1.8±0.9 |
2.2±0.3 |
点鼻液 |
20 |
1.3±0.73 |
1.87±0.53 |
注射 |
3 |
0.23±0.06 |
1.78±0.27 |
キット |
3 |
0.18±0.04 |
1.71±0.26 |
スマトリプタン®(サンド)) |
錠 |
50 |
1.8±0.9 |
2.2±0.3 |
スマトリプタン®(日医工) |
錠 |
50 |
1.43±0.73 |
2.27±1.08 |
ゾルミトリプタン |
ゾーミック®(沢井) |
錠 |
2.5 |
3.00 |
2.40 |
口腔内速溶錠 |
2.5 |
2.98 |
2.9 |
ゾルミトリプタン®(日医工) |
口腔内崩壊錠 |
2.5 |
3.2±1.6 |
3.25±1.06 |
エレトリプタン |
レルパックス®(ファイザー) |
錠 |
20 |
1.0±0.32 |
3.2 |
エレトリプタン®(ファイザー) |
錠 |
20 |
1.0±0.32 |
3.2 |
エレトリプタン®(日医工) |
錠 |
20 |
0.85±0.31 |
4.96±0.79 |
エレトリプタン®(アメル) |
口腔内崩壊錠 |
20 |
1.71±0.79 |
4.44±0.73 |
リザトリプタン |
マクサルト®(エーザイ) |
錠 |
10 |
1.0 |
1.6 |
口腔内崩壊錠 |
10 |
1.3 |
1.7 |
リザトリプタン®(ファイザー)
|
口腔内崩壊錠 |
10 |
0.96±0.37 |
1.96±0.22 |
ナラトリプタン |
アマージ®(GSK) |
錠 |
2.5 |
2.68±1.34 |
5.05±1.71 |
ナラトリプタン®(寿) |
錠 |
2.5 |
2.3±1.3 |
7.8±1.2 |
レイボー(ラスミジタンコハク酸塩)
❑ レイボー®錠 50㎎/100㎎は、1回100㎎を発作時に
経口投与します。 状態に応じ1回50~200㎎に調節
します。頭痛の消失後に再発した場合は、24 時間あ
たりの総投与量が 200㎎を超えな い範囲で再内服で
きます。
❑ 「トリプタン」拡張した脳血管を収縮して頭痛を和ら
げるのにたいし、「レイボー」片頭痛発作を起こす物質の放出を抑えて痛み
を消失させるため、脳梗塞・心筋梗塞・高血圧の患者さんでも使用できます。
❑ トリプタン系は、頭痛が出てから早期に飲むことで、頭痛が悪化するのを抑
える効果がありましたが、飲むタイミングが難しいとされています。レイボ
ー錠は、頭痛が起きてから4時間以内に内服すれば効果を得られるため、ト
リプタン系と比べると使用しやすい薬です。
❑ 副作用 : めまい、傾眠などが報告されています。薬を服用してから1時間
以内にあらわれることが多く、2~4時間でおさまると報告されています。
また、はじめての服用時に最もあらわれやすいとされています。はじめて内
服する場合は自宅をおすすめします。 運転や高所での作業は控えましょう。
内服回数が増えるにつれ副作用は軽減します。1ヶ月10錠までの処方できます。
❑ 片頭痛専用のお薬です。片頭痛発作時のみに使用し、予防的には使用しない
ようにしてください。服用するタイミングには影響されにくいお薬ですが、
片頭痛発作がおきはじめたら、我慢せず早めに服用しましょう。
◇その他の急性期治療薬
制吐薬
❑ メトクロプラミド、ドンペリドン
・随伴症状(悪心・嘔吐)に効果あり、鎮痛剤との併用が望ましい。
漢方薬
❑ 五苓散:雨の日に発症する片頭痛
❑ 呉茱萸湯(冷え・胃もたれ、吐き気、肩こり)
❑ 桂枝人参湯:のぼせ、胃下垂、動悸
◇妊娠中、授乳中の片頭痛治療
❑ 妊娠中は片頭痛発作の頻度が減少します。
❑ 発作が重度な場合には、アセトアミノフェンが勧められます。
❑ トリプタンは頭痛がひどい場合には使われることもあります。
❑ 授乳中はアセトアミノフェンが推奨されます。
妊娠期片頭痛の急性治療薬
➢ アセトアミノフェン(高い安全性、中等度の効果)
➢ トリプタン(最も高い~中等度の安全性、最も高い効果) ・・妊娠中期のみ
➢ イブプロフェン(中等度の安全性、中等度の効果)
妊娠期腱頭痛の予防薬
➢ プロプラノロール(高い安全性、最も高い効果) ・・第一選択薬
➢ アミトリプチン(中等度の安全性、最も高い効果)
授乳期の片頭痛の急性治療薬
➢ アセトアミノフェン/イブプロフェン(高い安全性、中等度の効果)
➢ トリプタン(エレトリプタン/スマトリプタンが望ましい、
高い安全性、最も高い効果) ・・母乳移行は少ない
授乳期の片頭痛の予防薬
➢ プロプラノロール/アミトリプチン(高い安全性、最も高い効果)
➢ バルプロ酸(中等度の安全性、最も高い効果)・・母乳移行は極めて少ない
◇月経時片頭痛
❑ 女性の片頭痛患者の約半数が、月経周期に関連して起こります。
❑ 月経時片頭痛の発作(重度で持続時間が長い)はトリプタンが推奨
されます。
❑ 予防薬は一般的な片頭痛予防療法と同様だが、月経に関連して主に
発作が起こる場合には期間限定で予防薬を使用する方法もあります。
急性治療薬
➢ トリプタン(スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、
ナラトリプタン)
➢ NSAIDs(メフェナム酸;ポンタール、スマトリプタン+ナプロキセン
ナイキサン)・・・・メフェナム酸の8時間間隔投与の有効性が示されている。
予防薬
➢ トピラマート
➢ 抗CGRP抗体(当院では処方できません)
◇片頭痛の予防療法
❑ 片頭痛が月に2回以上の片頭痛。
❑ 生活に支障をきたす頭痛が月に3回以上ある片頭痛。
❑ 急性期治療薬のみでは不十分な片頭痛。
生活習慣改善
・規則正しい生活。
・寝過ぎ・寝不足を避ける。
・低血糖を避けるため朝食をきちんと摂る。
・精神的ストレスや飲酒の軽減。
・騒音などからの隔離。
・側頭部を冷やしてたり圧迫したりすると、頭痛が改善することがあります。
・入浴すると血流増加や血管拡張をおこし、頭痛が増悪することがあります。
◇予防療法の実際
➢ 効果判定には少なくとも2か月を要します。
➢ 問題がなければ 3〜12か月は予防療法を継続し、緩徐に漸減しながら可能
であれば中止します。
◇予防療法に使用される薬剤
抗CGRP抗体(当院では処方できません)
・ガルカネズマブ
・フレマネズマブ
抗CGRP受容体抗体(当院では処方できません)
・エレヌマブ
抗てんかん薬
・バルプロ酸(妊娠中は禁忌):400~600mg(奇形発症率の上昇・IQ低下 の可能性があり,妊娠および妊娠の可能性のある女性には絶対禁忌)
抗うつ剤
・アミトリプチン
β遮断剤
・プロプラノロール20ー60㎎
Ca拮抗剤
・ロメレジン10-20㎎
ARB/ACE阻害薬
・カンデサルタン8㎎
・リシノプリル5-20㎎
➢ 薬剤は低用量から開始。
➢ 2~3ヶ月かけて効果判定
➢ 忍容性が良好な場合は、6~12ヶ月継続する。
➢ コントロール良好なら漸減し、可能であれば中止する。
➢ 共存症、妊娠、授乳の有無に注意する。
有効 |
ある程度有効 |
経験的に有効 |
有効/副作用に注意 |
無効 |
抗CGRP抗体
カルカネズマブ
フレマネズマブ
抗CGRP受容体抗体
エレヌマブ
抗てんかん薬
バルプロ酸
β遮断薬
プロプラノロール
抗うつ薬
アミトリプチン
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Ca拮抗薬
ベラパミル |
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◇片頭痛予防薬のゴール
➢ 発作頻度の減少(頻度・日数の50%以上の軽減)
➢ 急性期治療への反応改善
➢ 生活機能向上/生活への支障軽減
◇その他の予防薬(サプリメント)
マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10、ナツシロギク
は、ある
程度の片頭痛予防効果を期待できる。
■ 慢性頭痛
◇移行危険因子
・肥満
・いびき
・睡眠障害
・カフェインの過量摂取
・精神疾患
・片頭痛治療薬の乱用
・大きな生活環境の変化
・女性
・低い社会的地位
◇回復因子
・片頭痛予防薬の服用遵守
・ベースラインの頭痛の低頻度
・皮膚アロディニアの欠如
・体操
・頭痛急性期治療薬の乱用中止
■ 緊張性頭痛
・緊張性頭痛は、30分~7日間持続します。
・両側性に起こります。
・性状:圧迫感、締めつけ感があります(非拍動性)
・程度:軽度~中等度であり、日常的動作(歩行や階段の昇降)で増悪しません。
・危険因子/誘引:確定されたものはありません。
◇緊張性頭痛の急性期治療
・アセトアミノフェン、アスピリン・ダイアルミネート配合、ジクロフェナク、
ナプロキセン、ロキソプロフェン、チザニジン、セレコキシブなど。
◇緊張性頭痛の予防薬
・アミトリプチンなど(3ヶ月;最大6ヶ月)を目安に判断します。
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