■ JRC蘇生ガイドライン 2020
国際蘇生連絡協議会(ILCOR)が作成した心臓救急に関する国際コンセンサス(CoSTR)をベースに、各国・地域がその地域事情に適した救急・蘇生ガイドラインを更新しています。本邦では、2021年3月31日に「JRC蘇生ガイドライン2020」が公表されています。
■ 反応の確認・応援を呼ぶ
倒れている人を発見した場合まず意識状態・呼吸状態の確認をしましょう.「反応のない場合・判断に迷う場合」は、大声で助けを呼び、119番とAEDの手配をしましょう。
1) 意識状態の確認
肩(鎖骨部)をたたき、「大丈夫ですか?」「聞こえますか?」と声を掛けて反応があるか確認しましょう。
2) 119番通報
周囲の人に、119番通報や自動体外式除細動器AED)の手配を頼みましょう。119番と連絡がとれた場合は、救急車の要請・助言および指導を受けましょう。
3) 呼吸状態の確認
・呼吸がない
・異常な呼吸(あえいでいるような呼吸)
・呼吸がないかわからない
いずれの場合でも、心停止とみなし心臓マッサージを開始しましょう。
心停止でなかった場合のリスクを恐れず、迷わず心臓マッサージを開始することが大事です(疑わしきは罰するの精神です)。
4) 自動体外式除細動器
自動体外除細動器(AED)が届いたらすぐ操作を始めましょう。心臓が動いている人に使用しようとしても、AEDは作動しません)。
5) マッサージの継続
AEDを試みた後、救急隊員が到着するまで心臓マッサージを継続。
■ 胸骨圧迫(心臓マッサージ)
胸骨圧迫の部位
胸骨の下半分を圧迫しましょう。
胸骨圧迫の深さ
成人で5~6cmが最適とされています。
圧迫の深さ
❑ 深すぎるより浅すぎることが問題となります。
❑ 圧迫の深さが6cmを超えると肋骨骨折などの合
併症のリスクが高まり、逆に治療効果が得られに
くくなる可能性があります。
小児の場合
胸の厚みの約 1/3 が推奨されています.
■ 胸骨圧迫の早さ
❑ 1分間に 100~120 回のテンポで圧迫します。
❑ 胸骨圧迫はテンポが速すぎることより遅すぎる
ことが問題になります。
❑ 心臓マッサージの際に、音楽を思い浮かべるの
が有効との報告もあります。山畑らは、100~
120回/分に適した音楽として、ビートル
ズ”Obladi Oblada (オブラディ・オブラダ)”, プリンセス プリンセ
ス “Diamonds”等を報告しています(ガイドラインの記載ではありません)。
■ 胸骨圧迫中の注意点
胸骨圧迫で胸を押した後、掛かる圧を解除する事が重要とされています。解除する際は完全に胸を元の位置に戻すように力を抜きましょう。強く押すことばかり意識していると自然と手や腕に力が入ったままになって押しっぱなしになり、胸をポンプできなくなります。圧迫を1回行うたびに胸が元に戻るように注意して胸骨圧迫をする事が重要です。
■ duty cycle
duty cycle(BLSの時間の中で胸骨圧迫を行っている時間の比率)は、60%
以上が推奨されています。 人工呼吸や電気ショックを行うときに胸骨圧迫を
中断するのはやむを得ませんが、中断は最小限にすべきとされています(圧迫
中断は10秒を超えないようにしましょう)。
■ 人工呼吸
❑ トレーニングを積んだ救助者のみ胸骨圧迫と人
工呼吸を実施することが推奨されます。
❑ 胸骨圧迫から開始しましょう。
❑ 圧迫:人工呼吸=30:2で施行します。(30
回の胸骨の圧迫の後に2回の人口呼吸を施行)。
❑ トレーニングをうけていない一般救助者は、人
工呼吸を施行する事によるデメリットのほうが多
く(人工呼吸に要する時間やその質の問題)、人
工呼吸は推奨されていません。
■ 救助者が複数いる場合の注意点
❑ 1~2 分 ごとを目安に胸骨圧迫の役割を交代しましょう。
❑ 交代にかかる所要時間は最小にしましょう。
■ 自動体外除細動器(AED)の使用
1) AED (自動体外式除細動器)が到着したらすみやかに装着しましょう。
パッドの貼付
❑ 右前胸部と左側胸部に電極パッドを貼付。
❑ 未就学の小児 : 小児用パッドを使用。
❑ 小児用パッドがない場合 : 成人用パッドで
代用します。
❑ 成人 : 小児用パッドは使用できません。
2) AED による ECG(心電図) 解析が開始されたら、
❑ 傷病者に触れないようにします. AED の音声メッセージ に従って、ショ
ックボタンを押し電気ショックを行います。
❑ 電気ショック後は直ちに胸骨圧迫を再開します。
■ 救命処置をいつまで続けるか
❑ 1次救命処置(BLS)
救急隊など二次救命処置(ALS)を施行可能な救急隊員が到着するまで、胸骨圧迫と人工呼吸,そしてAEDの使用を繰り返します。
❑ 意識回復・呼吸正常
意識が戻り正常な呼吸に戻った場合や呼びかけに応じるなどのしぐさが出な
い限りは心肺蘇生を中断してはなりません。
❑ 心拍再開
❑ 心拍再開(ROSC) と判断できる反応(呼びかけへの応答、普段通りの呼吸や目的のある仕草)が出現した場合には、十分な循環が回復したと判断し心肺蘇生(CPR) をいったん中止できます。
❑ 自動体外式除細動器(AED)を装着している場合は電源を切らず、パッドは貼付したままにしておく必要があります。
■ 略語について
❑ CPR :「心肺蘇生」“Cardio Pulmonary Resuscitation”.
❑ ROSC :「心拍再開」“Return Of Spontaneous Circulation”.
❑ BLS :「1次救命処置」“Basic Life
Support”.
❑ ALS :「2次救命処置」“Advanced Life
Support”.
❑ ECG :「心電図」“electrocardiogram”.
❑ AED :「自動体外式除細動器」“Automated External Defibrillator”.
❑ 参考文献
日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン2020 一次救命処置
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