
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の治療 
■ MMI(メルカゾールR)とPTU(チウラジールR)
抗甲状腺薬には, MMI(メルカゾールR)と PTU(プロパジールR、チウラ
ジールR)があります.
手術や放射線治療と異なり、不可逆的な抗応戦機能低下症に陥ることはほとんどありません. いっぽう治療期間が長くなり、また副作用の頻度も13%程度あります.18ヵ月以上継続しても寛解にいたらない場合は、他の治療を検討する必要があります.
■MMI(メルカゾールR)



● 第一選択薬として推奨されています(副作用や妊
娠初期など禁忌でない限り).
*妊娠初期とは,器官形成期の妊娠4週0日~
15週6日.
● 1日1回の投与が可能です(望ましい).
● 初期治療として30mg/日以上用いる場合は分割
投与が望ましいとされています.
● 1日10mg以下ならば授乳が可能です.
● PTUよりも早く甲状腺機能が正常化します(最終
的な効果は同等です).
■PTU(プロパジールR、チウラジールR)



● 分割服用が必要です.
● 妊娠初期(ことに妊娠4~7週)の方には、第一選
択です.
● 1日300mg以下ならば授乳が可能です.
● 最終的な効果はMMIと同等です.
【 その他 】
■無機ヨウ素剤(ヨウ化カリウム丸R)


● Wolff-Chcikoff効果:ヨウ素を大量に服用すると、血液中の甲状腺ホ
ルモンの量が減ります(抗甲状腺剤より早く効果が発現).
● 抗甲状腺薬使用不可能な症例(抗甲状腺剤で重篤な副作用)や、急速に
改善の必要な場合(甲状腺クリーゼ・バセドウ病の手術前など)に、
無機ヨウ素剤を使用することがあります.
● 軽症のバセドウ病(低容量の無機ヨウ素剤でコントロール可能)は、無
機ヨウ素剤単独療法を検討してもよい.
● ヨウ素剤を長期にわたって使っていると効果がなくなり、甲状腺機能
亢進が再燃することがあります(エスケープ現象).
● 重症例(fT4>5ng/dL)では、MMI (15㎎)+KI (50㎎)の併用療法は
MMI (30㎎)単剤投与に比してが効果・安全性で優れています.
■L-サイロキシン(チラーヂンR)


【 以下の場合、L-サイロキシンを併用します 】
● 抗甲状腺薬の休薬により、再度甲状腺ホルモン値が高値に戻る場合.
● T3優位型バセドウ病で、fT3のコントロールが困難な場合.
● 131I内服治療後の甲状腺機能低下症.
● 抗甲状腺薬治療中(TSH上昇)の甲状腺眼症の増悪予防.
● 抗甲状腺薬漸減中の、甲状腺機能低下症(コントロール困難な場合).
■ 抗甲状腺薬の副作用について

● 副作用の合併頻度は13%です.
● ほとんどの副作用は、内服開始後3ヶ月以内に
おこります.投与開始~3ヶ月は、原則2週間
に1回血液検査が必要です.
● 副作用の観点からは、MMIが推奨されます(重
大な副作用はPTUで多い).
軽度の副作用


投与開始後2~3ヵ月以内に多いとされています.
● 蕁麻疹(4~6%)、軽度の肝障害、筋肉痛、発熱、関節痛
● 軽い皮疹は自然に消失する. 痒みがある場合は抗ヒスタミン薬を
服用すると改善することが多いとされています.
● 発熱、関節痛が出現した場合は、内服を中止します.
● 肝障害は、ALT/ALTが150 IU/L未満であれば休薬しなくても正常化
することが多い.
● 軽度な副作用の発生頻度
・PTU 300mg/日 > MMI 30mg/日・15mg/日
・PTU服用時の無顆粒球症は、投与量に関係なく発現します.
重度の副作用


● ANCA関連血管炎は、内服後1年以上経てからの発症頻度が高い.
● 無顆粒球症(0.1~0.5%)、多発性関節炎、重症肝障害
(投与開始後は、原則として2ヶ月の間は2週間に一度血液
検査を施行します)
● MMI 5~15mgであれば無顆粒球症の発現の可能性が低いとされています.
● PTUは,投与量に関係なく無顆粒球症が発現します.
無顆粒球症とは


血液中の白血球(特に好中球)が減少し、ほとんどなくなる病気です.
好中球が1,000/mm3未満になります. 服用開始後3ヶ月以内に起こりやすい
とされています. その結果,全身の抵抗力が弱まり、命に関わることがあり
ます. 症状は、発熱・喉の痛み・全身のだるさ等があげられます.
内服開始後3ヶ月間は,2~3週に一度は必ず血液検査を受けてください.
発生した場合は直ちに内服を中止します(多くの場合は入院治療となります).
その後は放射線治療や手術療法に変更することが必要です.
程度 |
頻度 |
種類 |
軽度 |
1~6% |
皮疹(5~6%)
軽度肝障害
筋肉痛
関節痛 |
重度 |
~0.5% |
無顆粒球症
重度肝障害
多発性関節痛
ANCA関連血管炎
インスリン自己免疫症候群
HTLV-1関連ぶどう膜炎
|
■ 抗甲状腺薬の初期投与方法
軽症の場合(fT4≦5ng dL)


MMI 15mg/日(1日1回)で開始します.
中等症の場合(5<fT4<7ng/dL)


MMI 15mg/日(1日1回)で開始します.
重症の場合(7ng/dL≦fT4)


MMI 30mg/日(1日2回)で開始します.
● 妊娠初期(4~7週)などMMIが使用できない場合
PTU300mg/日(1日3回)で開始します.
■ 抗甲状腺薬の維持
● 治療開始~3ヶ月
重症度に応じ、2~6週に一回血液検査(甲状腺機能・白血球数・
肝機能)を確認します(特に最初の2ヶ月は2週間ごとに検査).
● 甲状腺機能が正常範囲に入れば、4~6週間隔で血液検査.
● MMI投与量が5mg/日・隔日 あるいはPTU50mg/日・隔日
まで減量後は、これを維持量として一定期間継続します.
● 維持療法中は、2~3ヶ月ごとに血液検査をうけてください
● 抗甲状腺薬1錠隔日投与で、6ヶ月以上甲状腺機能が正常な場合は、
休薬を検討できます.
● 血中fT3、 fT4の正常化を確認後、薬を徐々に減量します.
● 大量の抗甲状腺薬とL-サイロキシン併用療法は、効果に差がない一方
で副作用が有意に増加するため、寛解率を高める目的での意義はなく
妥当ではないとされています.
■ 抗甲状腺薬の減量方法
● 抗甲状腺薬1錠隔日服用で、6ヶ月以上継続し、fT3,fT4,TSHが正常なら
中止を検討します.
● 最小量維持(抗甲状腺薬隔日服用)期間は長いほうが、寛解率が高く
再燃率は低いとされています.
傾向にあります.
● 抗甲状腺薬中止の時点で、TRAb陰性の方が寛解率が高いとされています.
● 抗甲状腺薬を1.5-2年継続しても休薬の見通しが立たない場合は(1~2日
に1錠まで減量できない)、抗甲状腺薬の継続か、他の治療法への変更が
必要です.
● 抗甲状腺薬を中止後は、初め6ヶ月は甲状腺機能を2-3ヶ月に1回検査し,
その後は徐々に感覚を延ばし,1年以降は6-12ヶ月おきに検査をする.
MMIの減量方法


・30mg/日 → 15-20mg/日 → 5mg/日づつ減量.
・15mg/日 → 10mg/日 → 5mg/日づつ減量.
PTUの減量方法


・300mg/日 →
150-200mg/日 → 50mg/日づつ減量.
・150mg/日 → 100mg/日 → 50mg/日づつ減量.
50mg/日になれば維持量とし、2~3ヶ月ごとに検査します.
1錠を一日おきに飲んでいただき、中止可能かどうか判断します.
■ 予後の予測因子
寛解しやすい症例


● 甲状腺機能亢進の程度が軽い人.
● 甲状腺腫が小さい人.
寛解しにくい症例


● 甲状腺機能亢進の程度が強い人.
● 甲状腺腫が大きいもの(多くの論文で報告されています).
● fT3 / fT4比が高い人.
● TRAbが経過中に低下しないか、変動する人.
● 若い人.
● 喫煙や精神的ストレス.
● 再発は、投薬中止後の1年以内に多いとされています. したがって、
中止~1年は2~3ヶ月おきに検査し、1年以降は6~12ヶ月おきに
検査します. 数年後に再発することや、甲状腺機能低下症になる例
もあり、少なくとも1年に1回は検査を行います.
■ ヨード摂取について
● 日常生活で厳密なヨード制限は必要ありません.
● ただし大量ヨード摂取には注意が必要です.
昆布(昆布だし)の常用、根昆布、ひたし汁etcの飲用
ヨード含有うがい薬の連用など.
■ 日常生活について
精神的・肉体的ストレス



精神的・肉体的ストレスを上手に処理しましょう(ス
トレスがバセドウ病を増悪、再発を誘発します).
● 甲状腺機能のコントロールが不十分な時期は、
規則正しい生活(十分な睡眠、ゆったりとした
生活)が必要です.
● 甲状腺機能が正常化するまでは、激し運動を
避けましょう(競技、長時間の運動).また手術
・抜歯・苦痛や恐怖を伴う検査も控えましょう.
食事


藻類の過剰摂取を注意する程度でよいとされています.
ヨウ素を多く含む食品 :
【魚介類】
いか、たこ、鮭、えび、ホタテ以外】
【卵類】
厚焼き卵、だし巻き卵、ウズラ卵
【菓子類】
ポテトチップス、醤油、せんべい
【昆布を使用した食品】
昆布の佃煮、昆布だし、とろろ昆布、昆布茶、昆布を含むつゆ、
ポン酢、顆粒風味調味料、カットわかめ、ひじき 等
喫煙


・バセドウ病の発症リスク上昇(3倍).
・バセドウ病の治療抵抗性を惹起.
・バセドウ病の緩解後、再発率上昇.
・バセドウ眼症の発症リスク上昇(4倍).禁煙が強く推奨されます.

|