■ 代謝異常関連脂肪性肝疾患 (MASLD)
◇MASLDとは



❑ 「非飲酒」と「少量の飲酒」で、脂肪肝を認め、他
の肝疾患を除外した病態を「NAFLD:非アルコール
性脂肪性肝疾患」と呼称されていました。 しかし
、「NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患」という
名称は、"alcohol=酒飲み"や"fatty=肥満"という言
葉が含まれており、不適切と世界的に議論され、
2024年8月に日本でも名称変更されました。
❑ この多くは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などを基盤に発症します。
❑ 少量飲酒とは、エタノール換算で男性30g/日,女性20g/日以下の機会飲酒をさします。
男性 30g/日とは |
女性 30g/日とは |
・ビール:750mL 以下
・日本酒:1合半 以下
・ワイン:グラス2杯半 以下
・ウイスキー:ダブル1.5杯 以下 |
・ビール:500mL 以下
・日本酒:1合 以下
・ワイン:グラス2杯 以下
・ウイスキー:ダブル1杯 以下
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◇特徴


❑ 生活習慣病の増加に伴い急増しており、検診受診者の30%程度に認められます。
❑ 内臓脂肪型肥満に好発し、男性では30歳代から,女性では閉経期以降に頻度が
増加します。発症前の数年間に3~5kg以上の体重増加のエピソードをもつこ
とが多いとされています。
■ 脂肪性肝炎(SLD)
❑ 生活習慣病やアルコール過飲により、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する状態です。
❑ 脂肪性肝疾患を全てをsteatotic liver disease (SLD)と総称することになりま
した。
❑ これまで使われていたNAFLD/NASHは、メタボリック症候群の基準の一部を
満たす場合に限りMASLD/MASHと診断することになりました。
■代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)
■代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)
■代謝機能障害アルコール関連肝疾患脂肪性肝炎(MetALD)
■アルコール関連肝疾患(ALD)
■特定成因脂肪性肝疾患(Specific Aetiology
Steatotic Liver Disease)
■成因不明脂肪性肝疾患(Cryptogenic Steatotic Liver Disease)
|

■代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)

❑ 以前「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼称されていました。
代謝機能の問題で、肝臓に脂肪が蓄積し、肝炎や肝硬変へと進行するおそれ
があります(アルコール以外の原因)。
以下のいずれかを併発している |
・肥満(BM≧23kg/m2 または 腹囲 男性>94㎝,女性>80㎝)
・糖尿病(空腹時血糖≧100㎎/dl または 2時間値≧140㎎/dl)
・高血圧(血圧≧130/85㎜Hg)
・中性脂肪≧150㎎/dl)
・低HDL血症(HDLコレステロール値 男性≦40㎎/dl、 女性≦50㎎/dl) |

■代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)

❑ 以前「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼称されていました。
MASLDが進行し、悪化した状態です。放置すると肝硬変や肝臓がんに進行
する可能性があります。
❑ アルコール摂取量 ・男性30g/日未満、 ・女性20g/日未満
以下のいずれかを併発している |
・肥満(BM≧23kg/m2 または 腹囲 男性>94㎝,女性>80㎝)
・糖尿病(空腹時血糖≧100㎎/dl または 2時間値≧140㎎/dl)
・高血圧(血圧≧130/85㎜Hg)
・中性脂肪≧150㎎/dl)
・低HDL血症(HDLコレステロール値 男性≦40㎎/dl、 女性≦50㎎/dl) |

■代謝機能障害アルコール関連肝疾患脂肪性肝炎(MetALD)

❑ MASLDに加え、中等量のアルコール摂取が重なることで起こる肝疾患です。
代謝機能とアルコールの両方のリスク因子が原因となります。
❑ アルコール摂取量 ・男性30~60g/日、 ・女性20~50g/日
以下のいずれかを併発している |
・肥満(BM≧23kg/m2 または 腹囲 男性>94㎝,女性>80㎝)
・糖尿病(空腹時血糖≧100㎎/dl または 2時間値≧140㎎/dl)
・高血圧(血圧≧130/85㎜Hg)
・中性脂肪≧150㎎/dl)
・低HDL血症(HDLコレステロール値 男性≦40㎎/dl、 女性≦50㎎/dl) |

■アルコール関連肝疾患(ALD)

❑ メタボリック症候群の有無は不問。
❑ アルコールの過量摂取で起こる肝疾患です。長期間にわたるアルコール摂
取が肝臓に負担をかけ、脂肪の蓄積や炎症、肝硬変を引き起こします。
❑ アルコール摂取量 ・男性60g/日超、 ・女性50g/日超)

■特定成因脂肪性肝疾患(Specific Aetiology Steatotic Liver Disease)

❑ メタボリック症候群の有無は不問。
❑ 特定の原因が明確に判明している脂肪性肝疾患です
。
・薬剤性肝障害
・ウイルソン病
・低栄養
・ウイルス性肝炎 など

■成因不明脂肪性肝疾患(Cryptogenic Steatotic Liver Disease)

❑ メタボリック症候群の有無は不問。
❑ アルコールや代謝機能障害などの原因が、特定できない脂肪性肝疾患です。
■ 検査所見
AST・ALT |
・AST/ALT比<1:過食,糖尿病,長期の肝機能障害
・AST/ALT比>1:アルコール,肝炎の急性期,肝硬変,肝癌。
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γ-GTP,ALP |
中等度上昇します。 |
M2BPGi |
肝線維化に特異的で、他疾患で高値になることは稀。
肝線維化の進行と高い相関を持ち、肝硬変から肝癌
への発症予測や肝癌切除術後生存の術前予測にも有用。
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FIB-4 index |
検査データ(ALT,AST,血小板数)を用いたスコアであり、
肝線維化の程度を確認できます。 |
MASLD fibrsis score(MFS) |
年齢,高血糖,BMI,血小板数,アルブミン値,AST/ALT比を組
み合わせて計算し、線維化を評価します。 |
血清フェリチン |
MASLD/MASH の30~40%で上昇します。 |
PNPLA3 |
肝臓細胞の、脂肪を処理する機能において重要な働
きをしており、脂肪性肝疾患の発症や進展に関係し
ていると考えられます。
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■ 食事療法
❑ 特異的な薬物療法はなく、いまだに食事運動療法を 中心とした生活習慣の改善が中心です。
❑ 脂肪性肝疾患の背景には肥満やインスリン抵抗性が
あり、減量に加えて合併する糖尿病、高血圧や脂質
異常に対する治療が必要です。
❑ バランス良い食生活と軽い運動を行うことで、脂肪
肝は改善されます。
・3%の減量:肝の脂肪化改善(35~100%の患者)。
・5%の減量:QOLの改善(41~100%の患者)。
・7%の減量:肝の炎症軽減(64~90%の患者)。
・10%の減量:肝線維化の改善(45%の患者)。
❑ 摂取総カロリー:25~35kcal/kg/日,蛋白質1.0~1.5g/kg/日,脂肪は総カロ
リーの20%以下とします。鉄分の過剰摂取は避けます。
❑ 低脂肪と低炭水化物のどちらがいいか : 低炭水化物ダイエットは、より
早期から効果が出ますが、カロリーが抑えられれば最終的には同じす。
❑ BMI[体重(kg)÷(身長(m)の2乗)] : 25以下にしましょう。
❑ ウエストを、男性85cm以上、女性90cm以下にしましょう。
❑ とり過ぎに注意しましょう。
1)食べ過ぎ・清涼飲料水・缶コーヒー・果物。
2)動物性の油(ラードやバターなど)。
3)揚げも・炒めもの・卵を使用した料理など。
4)マーガリン・ショートニング(トランス脂肪酸)を用いた菓子パンや洋菓子。
5)健康食品・サプリメント・漢方薬:安易に長期間使用するのは危険です。
6)健康ドリンク:カロリーが高いものがあります。
❑ 多くとりましょう。
1)青魚(多価不飽和脂肪酸を多く含む)。
2)緑黄色野菜(ビタミンEを含む)
■ 薬物療法

MASHに対し様々な薬物療法の検討がありますが、長
期予後などに関するエビデンスに乏しく、評価は定ま
っていません。また現時点で日本ではMASLD/MASH
に有効な薬剤で保険適用されているものはありません。
◇糖尿病治療薬


❑ ピオグリタゾン
組織学的改善の可能性が示唆されています。
糖尿病合併例では改善が期待され、投与する
ことが推奨されています(日本で保険適応なし)。
❑ SGLT2阻害薬
短期間の報告が多く、長期的効果は不明です。
❑ インクレチン関連製剤
結果がまちまちであり、一定の結論には達していません。
◇脂質異常症治療薬


❑ スタチン系薬剤
改善の報告があります。
❑ エゼミチブ
十分な効果は認められていません。
◇高血圧治療薬


❑ ARBやACE阻害薬
肝線維化の改善や抑制が示唆されています。
◇抗酸化薬


❑ ビタミンE
肝線維化の進んだNASH患者の肝移植と肝不全への
移行を抑制します。また肝機能および肝組織修復を
促進するため、投与することが推奨されています
(日本で保険適応なし)。
◇瀉血療法


❑ 鉄過剰蓄積例に瀉血が有効かどうかは明らかでなく
、行われないことが提案されています。
◇その他の治療



MASLD/MASHに対する特異的治療薬が開発が盛んにお
こなわれており、臨床試験も進行中です。
FXRアゴニスト、FGF製剤、甲状腺ホルモンβ受容体作
動薬、PPAR作動薬、ACCおよびDGAT2阻害薬、JNK
阻害薬、ASK1阻害薬、C=Cケモカイン受容体阻害薬
Caspase阻害薬、LOLX2抗体、Galectin3阻害薬
HSP47阻害薬、TLR4拮抗薬など。現在まで期待できる
効果はられていません。
◇運動療法



❑ 週3~4回、30~60分の有酸素運動(ウォーキング
やジョギング、水泳など)が、MASLD/ MASHの病
態を改善させることが報告されています。
❑ 筋肉トレーニングやヨガなどの運動(関節に負担を
かけない程度)も、筋肉量が増加し基礎代謝も高ま
るので、さらに効果的です。
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