尋常性痤瘡(ニキビ)ガイドライン2016
が公表されました.
尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)は,「アクネ」「ニキビ」とよばれ, 思春期以降に発症する顔、胸、背中に出現する皮疹です.90%以上の人が経験することから,「ニキビは青春のシンボル」と軽視されがちです. しかし, 放置すると痕が残り生活の質(Quality of Life:QOL)が低下するほか, いじめの原因にもなることから,早期治療が重要と考えられます. 塗り薬として, アダパレン, 過酸化ベンゾイル, クリンダマイシン/過酸化ベンゾイル配合剤などの使用により、治療レベルが向上しました. ガイドラインは今後5年をめどに改定される予定です.
重症度の分類
アクネ研究会により作成されました.皮疹数(赤いニキビの数を主体)による基準を下記に示します
軽 症:片顔に赤いニキビ(炎症性皮疹)が5 個以下
中等症:片顔に赤いニキビ(炎症性皮疹)が6 ~20個
重 症:片顔に赤いニキビ(炎症性皮疹)が21~50個
最重症:片顔に赤いニキビ(炎症性皮疹)が51 個以上
治療推奨のグレード分類
ガイドラインでは, 治療の推奨度をA, A*, B, C1, C2, Dに分類しています. 実際はこれら推奨度に加え, 患者様の意向,治療環境等を考慮し治療法を決定いたします.
A,A*:行うよう強く推奨する.
B:行うよう推奨する.
C1:選択肢の一つとして推奨する.
C2:推奨しない.
D:行わないよう推奨する.
ニキビの定義 / 非炎症性と炎症性.
非炎症性ニキビ
【1】微小面疱(びしょうめんぽう)
先行して見られる変化.毛穴がつまり,毛包
内に脂がたまった状態.観察不能でも「ニキ
ビ」の周りに存在しており,早期治療が重要.
【2】面皰(めんぽう:comedones)
毛穴の皮膚の表面が厚くなり(過角化)毛穴が
塞がります. 毛包内に脂が貯留し,ニキビ菌
がたまり,悪循環となります.
▸白ニキビ(閉鎖面皰) :0.1~3mmの小さな
盛り上がり. 毛穴が栓で詰まる.
▸黒ニキビ(開放面皰) :内容が増え,毛
穴が広がり内容物(黒色の固まり)が露出.
炎症性ニキビ
【3】赤ニキビ(紅色丘疹)
白ニキビや黒ニキビが化膿し腫れる. 毛孔
の部分に赤いもりあがり(隆起)が出現.
【4】膿疱(のうほう)
赤ニキビがさらに進展. 熱や膿を持った赤い
湿疹がますます大きくなる.
【5】嚢腫(のうしゅ)
炎症がさらに深部へ進行. 毛包が拡大してさらに盛り上がり,
進行した重症型.
【6】結節(けっせつ)
毛包壁の破壊が進み,固く触れる結節となる.
にきびの治療薬.
■ディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル)
効果
・毛穴をひらき,新たなニキビを防ぐ.
・ニキビが腫れ上がるのを予防します.
・直接的な抗炎症作用を持つが抗菌効果はない.
・炎症性皮疹(軽症から重症)および面疱に強く推奨されます.
副作用
・5パーセント未満に湿疹,ざ瘡,接触性皮膚炎,皮膚刺激,
皮脂欠乏症, 眼瞼炎,水疱,皮膚炎,皮脂欠乏性湿疹,
皮膚疼痛,発疹,そう痒性皮疹,脂漏性皮膚炎,皮膚浮腫,
顔面腫脹,蕁麻疹,乾皮症
・5パーセント以上に皮膚乾燥,皮膚不快感,皮膚剥脱,紅斑,
そう痒症
・妊娠中の投与に関する安全性は確立されていませ.
■ベピオゲル(過酸化ベンゾイル 2.5%ゲル:BPO)
効果
・抗菌作用(フリーラジカルがニキビ菌を殺菌
し,炎症を改善)
・角質層剥離作用
・ニキビ自体をできにくい状態にします.
・ディフェリンにない「抗菌作用」をもち,耐性
菌をつくりません.
副作用
・5パーセント未満に皮膚のかゆみ,かぶれ,しっしん,ピリピリ
感、灼熱感
・5パーセント以上に皮膚のカサカサ感(鱗屑や落屑と呼びます)
赤み・乾燥・刺激感・口周辺や目の周りに塗ると口角炎・眼瞼炎
が報告されています.
・妊娠娠中の投与に関する安全性は確立されていません.
■デュアック配合ゲル(過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン)
効果
・クリンダマイシン(CLDM) と過酸化
ベンゾイル(BPO)の両者にP. acnes
に対する抗菌作用あります.
・CLDMは抗炎症作用あります.
副作用
・長期維持療法は,現在のところ科学的根拠はありません.
・CLDM 外用の長期連用によって, P. acnesが抗菌剤耐性を獲得
する可能性があるため推奨されません.
■ダラシンTゲル(クリンダマイシン)
効果
・クリンダマイシン(CLDM)
→ P. acnes に対する抗菌作用および
抗炎症作用があります.
・1日に2回、洗顔後に適量を患部に塗布.
・1ヶ月の使用で、赤ニキビの半数が減少.
副作用
・長期維持療法は,現在のところ科学的根拠はありません.
・CLDM 外用の長期連用によって, P. acnesが抗菌剤耐性を獲得
する可能性があるため連用は推奨されません.
■エピデュオゲル(アダパレン/過酸化ベンゾイル配合ゲル)
効果
・上述のアダパレンと過酸化ベンゾイルの
配合ゲルです(相補的作用の2剤を配合
・角化異常を改善する(アダパレンの作用)
・抗菌活性および角質層剥離作用(過酸化ベンゾイルの作用)
・ニキビ自体をできにくい状態にします.
・過酸化ベンゾイルは他の抗菌剤と異なり、「抗菌作用」をもち,耐
性菌をつくらず、長期使用が可能です.
・アダパレンと過酸化ベンゾイル単剤で対応可能な場合は、単剤で
開始することを推奨します.
・過度の紫外線曝露を避けてください
(日焼け止めクリームを推奨).
・日焼けランプは禁止です.
副作用
・5パーセント未満に皮膚のかゆみ,かぶれ,しっしん,ピリピリ
感、灼熱感
・5パーセント以上に皮膚のカサカサ感(鱗屑や落屑と呼びます)
赤み・乾燥・刺激感・口周辺や目の周りに塗ると口角炎・眼瞼炎
が報告されている(開始後1ヶ月以内に起こることが多く、投与中止により回復します).
・妊娠娠中の投与に関する安全性は確立されていません.
・
微小面疱の治療.
推奨度A:行うよう強く推奨
▶ディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル)を強く推奨する.
・毛包上皮の角化を正常化させ,新たな面皰の形成を阻害.
・引き続き生じてくる炎症性皮疹も予防する.
・開始時からノンコメドジェニックな保湿剤を併用することで,
ディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル)の効果妨げずに,皮
膚刺激感,鱗屑,紅斑などの皮膚刺激症状が軽減する.
・保湿剤の「ニキビ」に対する有効性を示す根拠は無く,保険適
用も無い.
▶ベピオゲル(過酸化ベンゾイル 2.5%ゲル)を強く推奨する.
・副作用として塗布部位の紅斑や 落屑などはあるものの,容認で
きる範囲
推奨度B:行うよう推奨
▶面皰にディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル)とベピオゲル
(過酸化ベンゾイル 2.5%ゲル)の併用はを推奨する.
・両剤を併用することは相乗的な効果が期待できる.
・塗布部位の皮膚刺激症状の頻度が増える.
面疱(白ニキビ・黒ニキビ)の治療.
推奨度A:行うよう強く推奨
▶ディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル)を強く推奨する..
・毛包上皮の角化を正常化させ,新たな面皰の形成を阻害.
・開始時からノンコメドジェニックな保湿剤を併用することで,
ディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル)の効果妨げずに,皮
膚刺激感,鱗屑,紅斑などの皮膚刺激症状が軽減する.
・保湿剤の「ニキビ」に対する有効性を示す根拠は無く,保険適
用も無い.
▶ベピオゲル(過酸化ベンゾイル 2.5%ゲル)を強く推奨する.
・副作用として塗布部位の紅斑や 落屑などはあるものの,容認で
きる範囲
▶デュアック配合ゲル(クリンダマイシン1%・過酸化ベンゾイル
3%)は有を強く推奨する.
・長期維持療法は不可
推奨度B:行うよう推奨
▶面皰にディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル)とベピオゲル
(過酸化ベンゾイル 2.5%ゲル)の併用はを推奨する.
・両剤を併用することは相乗的な効果が期待できる.
・塗布部位の皮膚刺激症状の頻度が増える.
推奨度C2:推奨しない
▶面皰に外用抗菌薬を推奨しない.
・抗菌薬が面皰に有効とする基礎データが少なく,作用機序に関
する根拠もなく,保険適応外.
▶面皰に漢方は有効か?
推奨度 C1:(荊芥連翹湯,清上防風湯,十味敗毒湯),
他の治療が無効,あるいは他剤が使用できない
状況では選択肢の一つとして推奨する.
推奨度 C2:(黄連解毒湯,温清飲,温経湯,桂枝茯苓丸)
十分な根拠がないので推奨しない.
面疱(赤ニキビ・膿疱)の治療.
推奨度A:行うよう強く推奨
▶ベピオゲル(過酸化ベンゾイル 2.5%ゲルを強く推奨する.
▶ディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル) と外用抗菌薬の併用
を強く推奨する.
▶ディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル) を強く推奨する.
▶デュアック配合ゲル(クリンダマイシン 1%/過酸化ベンゾイル
3%) の配合剤を強く推奨する.
▶外用抗菌薬(クリンダマイ シン,ナジフロキサシン,オゼノキ
サシン)を強く推奨する
▶内服抗菌薬:内服を強く推奨する
・Aビブラマイシン(ドキシサイクリン)
・A* ミノマイシン(ミノサ イクリン)
推奨度B:行うよう推奨
▶ディフェイリン(アダパレン0.1%ゲル)とベピオゲル
(過酸化ベンゾイル 2.5%ゲル)の併用を推奨する(塗布部位の皮
膚刺激症状の頻度が増える事が難点).
推奨度C2:推奨しない
▶面皰に外用抗菌薬を推奨しない.
・抗菌薬が面皰に有効とする基礎データが少なく,作用機序に関
する根拠もない.
・保険適応外
▶面皰に漢方は有効か?
推奨度 C1:(荊芥連翹湯,清上防風湯,十味敗毒湯),
他の治療が無効,あるいは他剤が使用できない
状況では選択肢の一つとして推奨する.
推奨度 C2:(黄連解毒湯,温清飲,温経湯,桂枝茯苓丸)
十分な根拠がないので推奨しない.
▶ステロイド外用は推奨しない (推奨度 C2)
・ステロイド外用が痤瘡に有用とする根拠はない.
・ステロイド外用薬は,一時的に炎症を止めるが,痤瘡を誘発
する.
・長期間の使用は,副作用の点から明らかに好ましくない.
▶ケミカルピーリングは, 標準治療が無効あるいは実施できな
い場合に選択肢の一つとして推奨する(保険適用外).
膿腫・硬結の治療.
推奨度C1:選択肢の一つとして推奨
炎症を伴う囊腫/硬結に,内服抗菌薬を選択肢の一つとして
推奨する.
日常生活の注意点.
推奨度C1:選択肢の一つとして推奨
スキンケア・メイク・洗顔
▶オイルクレンジングで痤瘡の個数は改善
し,メイク落しの一つの候補となる.
▶皮脂の除去による痤瘡予防効果は合理的
な根拠があると考えられ,1日2回の洗顔
を推奨.
▶洗浄剤の成分に角層 を剝がすスクラブの有効性は確立されて
いない.
▶消毒薬や抗菌剤含有の洗浄剤,刺激性に配慮した洗浄剤の有効
性は不明.
▶イオウ製剤は,脱脂作用と角層剝脱作用があるとされ,「ニキ
ビ」に保険適応が認められている.
▶スキンケアに痤瘡用基礎化粧品の使用が選択肢の一つとして
推奨.
▶QOL改善に, 化粧(メイクアップ)指導を行うことを選択肢の
一つとして推奨.
▶低刺激性でノンコメドジェニックな化粧品を選択するなど配慮
が必要.
▶油性の化粧品による「ニキビ」の悪化は事実であり,コメドジ
ェニック作用のある化粧品は 避けるべき.
▶経口避妊薬(ピル)について他治療で改善が不十分で,避妊を
容認する成人女性に,経口避妊薬を使用してもよいが,推奨は
しない.
推奨度C2:推奨しない
内服・ビタミン
▶「ニキビ」にスピロノラクトンの内服を
推奨しない.
▶「ニキビ」にビタ ミン剤( A,B2,B6
E )の有効性を推奨する根拠はない.
・ビタミン A :毛包表皮の角化を抑制
・ビタミン B2 ,B6 :皮脂分泌を抑制
・ビタミン E は過酸化脂質を抑制
食事
▶チョコレートは「ニキビ」の悪化因子に
なることは否定されている.
▶100% カカオパウダーは「ニキビ」を
誘発したとする報告があるが(小規模な
検討),さらなる検討が待たれる.
▶砂糖の摂取量は「ニキビ」に関係しない.
▶特定の食物が「ニキビ」の悪化因子である明確な証拠はない.
▶極端な偏食は避け,バランスの良い食事摂取が推奨.
▶健康的であるとしてあげられる食品の有効性が示されている.
▶魚油に多く含まれるエイコサペンタエン酸を含むサプリメント
の有効性は不明。
(尋常性痤瘡ガイドライン2016より抜粋)
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