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 ■ 動脈硬化性疾患                   
 

  動脈硬化性疾患予防ガイドライン

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版が5年ぶりに改訂されました。 



<主な改訂点>


 1)高TG血症の診断:
  ・空腹時採血:150mg/dL以上、
  ・随時(非空腹時):175mg/dL以上。


 2)動脈硬化性疾患の絶対リスク評価:
   吹田スコアに代わり久山町研究のスコアを採用。


 3)糖尿病がある場合の管理目標値の変更。


 4)二次予防の管理目標値の変更。       など




 ■ 動脈硬化性疾患予防のためのリスク評価



 
LDLコレステロールの上昇




 ❑  将来の冠動脈疾患:発症/死亡を予測する
 ❑  脳梗塞:発症/予防と正の相関を示唆
 ❑  出血性脳卒中:発症/要望と負の関係を示唆


 
総コレステロール





 ❑  将来の冠動脈疾患:発症/死亡を予測する
 ❑  脳梗塞の:発症/要望と正の相関を示唆
 ❑  出血性脳卒中:発症/要望と負の関係を示唆



 
Non-HDLコレステロール







 ❑  将来の冠動脈疾患:発症/死亡を予測する
 ❑  脳卒中:関連不明


 
HDLコレステロールの低値





 ❑  将来の冠動脈疾患:発症/死亡を予測する
 ❑  将来の脳梗塞:発症/死亡を予測する



 
中性脂肪





 ❑  将来の冠動脈疾患:発症/死亡を予測する

 ❑  将来の脳梗塞:発症/死亡を予測する




 ■ 脂質異常症の診断基準


診断基準
 LDLコレステロール   140/㎗以上   高LDLコレステロール血症
 120139/   境界域高LDLコレステロール血症
 HDLコレステロール  40/㎗未満   低HDLコレステロール血症
 トリグリセライド   150/㎗以上(空腹時採血)   高トリグリセライド血症  
 175/㎗以上(随時採血)
 Non-HDLコレステロール  170/㎗以上   高Non-HDLコレステロール血症












 測定方法


脂質異常症の検査


 ❑  総コレステロール(TC)、中性脂肪(TG)HDLコレステロ
   ール(HDL-C)は、
早朝空腹時(10時間以上の絶食後)に試薬
   を用い、直接測定します。


 ❑  LDLコレステロール(LDL-C)は、TCTGHDL-Cを直接
   法で測定した後、Friedewald式を用い間接的に計算します。


 ❑  LDLコレステロールを直接測定する方法は下記の場合は不注意が必要です。
   ・著明な低LDL-C血症(<20/dl
   ・著明な低HDL-C血症(<20/dl
   ・著明な高HDL-C血症(≧120/dl)
   ・著明な高TG血症(≧1,000/dl
 ❑  non-HDL-Cは、TG400/dl以上の時や食後採血の場合に使用します。
   ・高TG血症を伴わない場合、non-HDL-Cの差が30/dlより小さくなる
    可能性があるので注意を要します。
   ・TG≧600/dlの場合は、使用は避けるべきです。


 [ 用語の説明 ]
 ◆コレステロールは人間の体内に存在する脂肪分であり、「細胞膜」「性ホルモン」
「副腎皮質ホルモン」「胆汁酸」をつくる材料です。また、「ビタミン類を代謝」す
るなど、人間の体にとって大事な成分です。 いっぽうで、血液中のコレステロール
量が増えすぎると、動脈硬化が起こりさまざまな病気を起こします.コレステロ

ールは一般的に「総コレステロール」「HDL(善玉)コレステロール」
LDL(悪玉)コレステロール」「中性脂肪」に分類されています。


 ◆一次予防群:心筋梗塞/狭心症/アテローム性脳梗塞を起こしたことない人。

 ◆二次予防群:心筋梗塞/狭心症/アテローム性脳梗塞を経験した人


 











 ❑ 総コレステロール(TC
  血液中に含まれるすべてのコレステロールの総量です。

  LDL(悪玉)コレステロール

  肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割を担っています。
  増えすぎると血管中にたまって、動脈硬化を起こす危険性が高まります。

  HDL(善玉)コレステロール
  小腸などで作られ、動脈にたまったLDLを肝臓などへ回収します。

  中性脂肪(TG
  糖分(炭水化物、アルコール、甘いもの)の摂り過ぎや運動不足で増え、
  動脈硬化を進行させます




 ■ 管理目標値の設定

脂質異常症の目標値
 ❑  動脈硬化性疾患の絶対リスク評価
   3つのカテゴリー(低・中・高リスク)に分類し、目標値
   を設定します。

  

 ❑  絶対リスク評価方法
   吹田スコアに代わり、久山町研究スコアを使用。


 [ 用語の説明 ]
久山町研究スコアとは、①性別、喫煙、収縮期血圧、④HDL-C⑤LDL-C
糖代謝異常、の6つの因子から動脈硬化性心血管疾患の発症危険度を予測します。
日本動脈硬化学会のサイト
で計算できます。


リスク区分別脂質管理目標値    
治療方針の原則 管理区分 脂質管理目標値(/)   
 LDL-C Non-HDL-C TG HDL-C

一次予防

生活習慣の改善

薬物療法 
低リスク   <160  <190

空腹時3)

 <150

随時
 <175
40
 中リスク  <140  <170
高リスク

 <120

 <1001) 

 <150

 <1301)

二次予防

生活習慣の改善
+
薬物療法
 冠動脈疾患または
アテローム血栓性脳梗塞
 の既往4)
  <100
 <70 ※2) 

 <130

 <1002)














 ※1) PAD、細小血管症(網膜症,腎症,神経障害)合併時、または喫煙ありの場合考慮する。


 ※2) 急性冠症候群,家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞
   のいずれかを合併する場合考慮。

 ※3) 空腹時(10時間以上の絶食)。  随時(10時間以内の摂食)
 ※4) 頭蓋内外動脈の50%以上の狭窄、または弓部大動脈粥腫(最大肥厚4㎜以上)




 ■ 脂質異常症の治療


 一次予防群に対する治療方法
 

 ➢ 一次予防における管理目標達成は、非薬物療法が基本です。
 
 ➢ LDL-C180/dl以上の場合は薬物療法を考慮します。


 ➢ まずLDL-Cの目標を達成します。 次にnon-HDL-Cの目標を達成します。

 ➢ HDL-Cは生活習慣の改善(禁煙、食生活の是正、適正体重の維持)で対処します。

 ➢ 低/中リスクの場合は、LDL-Cを20~30%低下させることを目標とします。




 二次予防群に対する治療方法
 

 ➢ ライフスタイルの改善と同時に、必要に応じて早期より内服治療が必要です。





 食事療法の実際



一価不飽和脂肪酸の脂質改善効果


オリーブ油、ひまわり油などの食用油に多く含まれています。


 ➢ 
適正な総エネルギー摂取量のもとで、一価不飽和脂肪酸の摂
   取量を増やしましょう。

 ➢ 適正な総エネルギー摂取量のもとで、一価不飽和脂肪酸で置
   換しましょう。





n-3系多価不飽和脂肪酸の動脈硬化性疾患発症の予防


魚,えごま油,あまに油,くるみなどに多く含まれています。


 ➢ 
n-3系多価不飽和脂肪酸(魚油)」摂取を増やすと、中性脂肪が
   低下します。

 ➢ 食事による「魚油」摂取量の増加により、冠動脈疾患の抑制
   が期待できます。



n-6系多価不飽和脂肪酸の動脈硬化性疾患発症の予防


コーン油,ごま油などに多く含まれています。


 ➢ 
適正な総エネルギー摂取量のもとで「n-6系多価不飽和脂肪
   酸」の摂取量を増やしましょう。

 ➢ 適正な総エネルギー摂取量のもとで「飽和脂肪酸摂取」を「n-6系多価不飽
   和脂肪酸摂取(リノール酸)」で置換しましょう。



トランス脂肪酸の制限による動脈硬化性疾患発症の予防

  

マヨネーズ,菓子パン,ドーナツ,フライドポテト,生クリーム、
パイ,スナック菓子,クッキー,バター,マーガリン,ショートニ
ングなどに多く含まれています。


 ➢ トランス脂肪酸」を、「一価不飽和脂肪酸」や「多価不飽和脂肪酸」に置換
   しましょう。
 ➢ 「トランス脂肪酸」の摂取を控えましょう。



果糖を含む加工食品と動脈硬化性疾患発症の予防


果糖を含む加工食品の過剰摂取を減らすと中性脂肪の低下が期待できる。



日本食パターンと動脈硬化性疾患発症の予防


 ➢ 
控える物:肉の脂身や動物油(牛脂、ラード、バター)、
        加工肉

 ➢ 推奨する物:大豆、魚、野菜、海藻、きのこ、果物、
        未精製穀類




 
運動療法の実際


脂質異常症の運動療法

 ❑  有酸素運動(ウォーキング、速歩、水泳、エアロビクス、
   ジョギング、サイクリングなど)


 ❑  中等度の運動強度(歩行、楽である~ややきつい)

 ❑  一回30分以上×週3回以上
 ❑  こまめに歩く、座ったままの生活を避ける
 ❑  レジスタンス運動の併用も有効



 薬物療法の実際



脂質異常症治療薬の薬効による分類     

分類(主な一般名)

 LDL-C  TG  HDL-C non-HDL-C 

 スタチン
  ・プラバスタチン,シンバスタチン,フルバスタチン

 ↓↓    -~↑  ↓↓
 スタチン
 
 ・アトルバスタチン,ピタバスタチン,ロスバスタチン
 ↓↓↓    -~↑  ↓↓↓
 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
  ・エゼチミブ
 ↓↓      ↓↓
 陰イオン交換樹脂
  ・コレスチミド,コレスチラミン
 ↓↓      ↓↓
 プロブコール
  ・プロブコール
     ↓↓  
 フィブラート系
  ・ベザフィブラート,フェノフィブラート,クロフィブラート
 ↑~↓  ↓↓↓  ↑↑  

 選択的PPARαモジュレーター
  ・ペマフィブラート

 ↑~↓  ↓↓↓  ↑↑  
 ニコチン酸誘導体
  ・ニコモール,ニコチン酸トコフェロール
   ↓↓    
 n-3系多価不飽和脂肪酸
  ・イコサペント酸エチル,オメガ-3脂肪酸エチル
       























↓↓↓↓  50%以上   ↓↓↓  50%~-30%以上   ↓↓  20%~-30%以上
   10%~20%以上      10%~20    ↑↑  20%~30
   10%~10            



内服薬の注意点


 ❑  スタチン
  ➢マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン・クラリスロマイシン等)、ARB、カルシウム拮抗剤、
    ワルファリン、グリメピリドとの併用により、血中濃度が上昇するため有害事象が発生する
    可能性があります。

 ❑  ベザフィブラート
  ➢血清クレアチニン値が2.0㎎/dl以上、フェノフィブラートは血清クレアチニン値2.5㎎/dl以上で、
    投与禁忌です。
  ➢フェノフィブラートは胆石症がある場合、投与禁忌です。



                         

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