■ インフルウイルスの種類
❑ A型、B型、C型があります.人に流行
を起こすのは、A型とB型です.
❑ A型ウイルスの表面には、HAタンパク
質(H1~H16)とNタンパク質(N1~
N9)が存在し、144種類の亜型が存在
します.たとえば、スペインかぜ
(H1N1)、アジアかぜ(H2N2)、香港か
ぜ(H3N2) などです.
❑ A型・B型インフルエンザの流行は、例年
12月~3月に多いとされています.
■ インフルエンザの症状
かぜ症状
❑ 咳、痰、鼻水、喉頭痛、
全身症状
❑ 突然の発熱、高熱(38℃以上)、関節痛、筋肉痛、全身倦
怠感(だるさ).
高齢者
❑ 咳嗽、全身倦怠感のみで呼吸器症状に乏しいことがあります.
■ インフルエンザの感染対策
❑ 手指衛生の励行.
➢ 速乾性擦式アルコール製剤を用いた手指消毒(推奨).
➢ 石鹸および流水による手洗い.
❑ 咳エチケットの励行.
➢ 咳やくしゃみの際は、口を覆うかマスクを着用する.
➢ 手に鼻汁や痰が付着した場合は、すみやかに洗う.
❑ インフルエンザワクチンの接種.
➢ 強く推奨される.
❑ マスクの着用
➢ サージカルマスクを用いる.
❑ 抗インフルエンザ薬の予防内服 (健康保険対象外).
(※ 2023年以降治療薬が品薄となっており、
現在は処方できません)
■ インフルエンザの治療薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)
オセルタミビル®
❑ 全世界で使用され、最もエビデンス
のある薬剤です.
❑ 成人・小児 : 罹病期間短縮、合併
症防止が証明されています(海外).
❑ 低年齢小児のB型インフルエンザ : 効果が減少した
ことが報告されています.
❑ 10歳前後の小児:H1N1, H3N2, B型では、ザナミビル
と効果に差はみられませんでした.
❑ 原則としてノイラミニダーゼ阻害薬同士の併用は避ける
べきです.
ザナミビル(リレンザ®)
❑ 成人 : 外来で48時間以内に治療を開始した場合、
罹病期間の短縮、症状の軽快が証明されています.
❑ 健康な小児 : 罹病期間の短縮を認めるも、合併症
防止の有効性は証明されていません.
❑ B型インフルエンザ: 効果が高いとする報告があります.
❑ 重症例・肺炎・気管支喘息の合併例 :吸入の効果は
限定的あるいは気管支攣縮を惹起する可能性が考えら
れるため避けるべきです.
❑ 現在まで耐性の報告はほとんど見られません.
ラニラビル(イナビル®)
❑ 小児での治験では、オセルタミビル(タミフル®)感受
性が低下するH274Yウイルスにも有効です.
❑ 海外での試験において有効性が得られなかったことに
より海外での発売が中止となり, 使用できるのはわが国
のみとなっています.
❑ わが国でのサーベイランス : 臨床的有効性が継続し
ていることが報告されています.
❑ ザナミビル同様、耐性は報告されていません.
❑ 重症例・肺炎・気管支喘息の合併例 :吸入の効果は
限定的あるいは気管支攣縮を惹起する可能性が考えら
れるため避けるべきです.
バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)
日本感染症学会では、ゾフルーザ®の使用に関し、以下の
ような提言をしています.
❑ 12-19歳および成人 : 臨床データが乏しく、現時点
では推奨/非推奨を決められない.
❑ 12歳未満の小児 : 低感受性株の出現頻度が高いこと
を考慮し、慎重に投与を検討する.
❑ 免疫不全患者や重症患者 : 単独での積極的な投与は
推奨しない.
➢ 高齢(65歳以上)
➢ 小児(5歳未満)
➢ 妊娠中
➢ 肥満
➢ 基礎疾患がある
* 慢性呼吸器疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患など)
* 慢性心疾患(先天性心疾患、冠動脈疾患など)
* 代謝性疾患(糖尿病など)
* 腎機能障害
* 免疫機能不全(ステロイド内服、T細胞性免疫不全など)
■ インフルエンザウイルスの排泄
❑ 発症から2日をピークに5日程度ウイルス排出が継続します.
❑ 小児、高齢者、免疫不全者ではウイルス排泄期間が延長
します.
❑ 検査でたまたまみつかった無症候性インフルエンザ(症状
がない)でも、ウイルス量は少ないもののウイルス排泄が
認められると報告されています.
※) ウイルス排泄期間・排泄量・抗インフルエンザ薬の二次感
染リスクについての科学的な根拠が十分ではありません.
■ インフルエンザの感染対策
衛生管理
❑ 接触感染対策として、手指衛生の遵守
は有効です.
❑ 手指衛生により、家族内感染を58%
減少すると報告されています.
❑ 一日の手洗いが5回以上で35%・10回
以上で41%罹患を抑制すると報告されています.
ワクチン
❑ 発症予防効果は、若干の相違があるも
概ね40%程度とされています.
❑ 肺炎球菌ワクチンとの併用が推奨され
ています(成人肺炎診療ガイドライン
2017).
❑ 妊婦への接種による胎児への影響はありません.また
胎児出生後のインフルエンザ罹患リスクを減少させる
ことを期待できます.
マスク
❑ 咳エチケットおよび飛沫予防策として
重要な個人防護具です.
❑ 医療従事者を対象にした調査では、イ
ンフルエンザ対応時に効果があったと
する報告があるいっぽうで、常時着用
では有用でなかった報告もあります.
予防内服
❑ オセルタミビル(タミフル®)、ザナミビル(リレンザ®)、
ラニラビル(イナビル®)が使用可能です.
❑ 約80%の発症予防効果が期待できます.
❑ 早期に開始したほうが効果があります.
❑ 入院率や肺炎発症率には影響ないとの報告もあります.
その他
❑ 居室の換気不良により感染が拡大する
可能性があります.
❑ 伝搬対策として、加湿器や空気清浄機
の有効性に対する報告は少ないです.
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