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     骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版
       

 

「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版」が発表されて骨粗鬆症ガイドライン2105以降「原発性骨粗鬆症の診断基準2012年度改訂版」,「椎体骨折評価基準2012年度改訂版」,「骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイドライン2012年版」,「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014年改訂版」などへて「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」が刊行されました.





 ■ 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)


骨塩低量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず、骨評価の結果が下記の条件を満たす場合、原発性骨粗鬆症と診断する.

 Ⅰ脆弱性骨折(1)あり.
   1. 椎体骨折(2)または大腿骨近位部骨折あり
   2. その他の脆弱性骨折(3)があり、骨密度(4)YAM
    
80%未満.

 Ⅱ. 脆弱性骨折なし  
   1. 骨密度(4)YAM70%以下または-2.5SD以下.




1:軽微な外力によって発生した非外傷性骨折.軽微な外力とは
   、
立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力をさす.
2: 形態椎体骨折のうち、3分の2は無症候性であることに留意
   するとともに、鑑別診断の観点からも脊椎X線像を確認する
   ことが望ましい.

3:その他の脆弱性骨折:軽微な外力によって発生した非外傷性
   骨折で、骨折部位は肋骨、骨盤(恥骨、坐骨、仙骨を含む)
   、上腕骨近位部、橈骨遠位端、下腿骨.

4:骨密度は原則として腰椎または大腿骨近位部骨密度とする.
   
また、複数部位で測定した場合にはより低い%値またはSD
   
値を採用することとする.腰椎においてはL1L4またはL2
   
L4を基準値とする.ただし、高齢者において、脊椎変形な
   どのために腰椎骨密度の測定が困難な場合には大腿骨近位部
   骨密度とする.大腿骨近位部骨密度には頚部またはtotal hip
    
total proximal femur)を用いる.これらの測定が困難な
   場合は橈骨、第二中手骨の骨密度とするが、この場合は%の
   み使用する。別表に日本人女性における骨密度のカットオフ
   値を示す。


 付記   骨量減少(骨減少)[Iow bone mass osteopenia)]骨密度が-2.5SDより大きく-1.0SD未満の場合を骨量減少とす.

日本骨代謝学会日本骨粗鬆症学会合同原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会 :J Bone Miner Metab.31,247-57,2014,Osteoporosis Japan. 21(1), 9-21, 2013)より引用 [原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)]



 ■  骨折の危険因子              



メタアナリシス
システマティックレビューの結果





 危険因子  骨折相対リスクに関すまとめ  相対リスク
  低骨密度  骨密度1.5SD以下  1.5~2.5 
骨密度1.5SD以下
  65
歳の大腿骨近位部骨折 男性:2.94 女性:2.88 
 1.5~2.5
既存骨折    1.86
喫  煙   1.251.76
飲  酒   1日24-30gのエタノール   1.23~1.68
ステロイド使用    1.712.63
骨折家族歴 親の大腿骨近位部骨折で大腿骨近位部骨折   2.3 
運  動 骨折リスク2050%抑制   
体重・BMI  BMI1単位高い  0.93
大腿骨近位部骨折は骨密度にかかわらずBMIが低い 上昇
カルシウム摂取 カルシウム補助薬  0.77~0.86
(有意でない)


純アルコール量(2430)
ビール 5% 約600ml
日本酒 15%  約220ml
焼酎 25% 約130ml
ウイスキー 43% 約70ml
ワイン 14% 約220ml
缶チューハイ 5% 約620m






 ■ 骨粗鬆症の予防方法9              

 1)若年者における予防


日本人女性における最大骨量獲得年齢は
 18
歳時であるとされています.(大腿骨
 近位部骨密度の100%および腰椎骨密度
 の99.8%を獲得)したがって高い最大骨
 量獲得のために効果的な介入時期は、18
 
歳以前とされています若年期に可能な
 限り高い骨量を獲得しておく事が重要です(閉経後に必発する骨
 量低下を可能な限り抑制する) 

 ●
適度な体重の維持(若年女性のやせすぎが問題)
 ●積極的なカルシウム・ビタミンDの摂取
 強度のある運動


 2)中高年者の予防



 適正体重の維持とやせの防止
 
継続的な栄養指導により、骨密度が上
  昇します. 
 ●歩行は低リスクであり、大腿骨頚部
  (股関節の折れやすい部位)の骨密度
  上昇も期待できます.

喫煙と過度の飲酒は避けることが推奨されます.


 3)転倒予防



 ビタミンD濃度の不足した方へのビタ
  ミンDは、転倒リスクを抑制します
 施設入居高齢者に対してはヒッププロ
  テクターが有効です.


 4)運動療法



 背筋強化訓練 : 
      椎体骨折予防に有用

筋力訓練・バランス訓練 :
      高齢者の転倒予防に有用

 ●骨密度を上昇 : 
      有酸素加重運動,筋力訓練,
      バランス訓練
            
            




 ■ 骨粗鬆症の食事療法             



推奨される食品  過剰摂取しない方が良い食品
カルシウム(700800 mg)

牛乳・乳製品,小魚
緑黄色野菜,大豆製品

ビタミンD(1020μg)

魚類,キノコ類

ビタミンK(250300 μg)

納豆,緑色野菜

果物と野菜・タンパク質

肉・魚,,,乳製品
リンを多く含む食品
 カルシウムの排泄↑

一部加工食品,一部清涼飲料水

食塩


カフェインを多く含む食品

コーヒー紅茶・アルコール 

※)カルシウムサプリメントの健康リスク
 カルシウムサプリメントの使用により,心血管疾患のリスクが高
 まる可能性あり(1回に500mg以上摂取しないよう配慮).
 しかし同じ量のカルシウムを食品として摂取した場合にはリスク
 の可能性なし.





 
カルシウム自己チェック表

摂取品目 0 0.5点 1点 2点 4点
牛乳 (-) 1-2  1-2 3-4 毎日
ヨーグルト (-) 1-2 3-4 毎日 毎日2個
チーズetc乳製品 (-) 1-2 3-4 毎日 毎日2
大豆,納豆など豆類 (-) 1-2 3-4 毎日 毎日2
豆腐,揚げetc大豆製品 (-) 1-2  3-4 毎日 毎日2種
ホウレン草,小松菜etc青菜 (-) 1-2 3-4 毎日 毎日2種
海草類 (-) 1-2 3-4 毎日  
骨ごと食べる魚 (-) 1-2 1-2 3-4 ほぼ毎日
小魚(シラス・エビ) (-) 1-2 3-4 毎日 毎日2種
食事回数 / 日   1ー2    欠食多 3

合計点数   判定 コメント
 20点以上 良い 1日必要量(800mg)がとれてます
  1619  少し不足 1日必要量に少し不足.摂取を心がけ 
 1115 不足 1摂取量600mg.食事の工夫が必要 
810 かなり不足 1日必要量の半分しかとれていない 
07  全く足りない  ほとんどとれていない.


   


カルシウム推奨量(700800mg)
食品 一回使用量(g)  カルシウム量(mg)
牛乳 200 220
スキムミルク 20 220
プロセスチーズ 20 126
ヨーグルト 100 120
干しエビ 5 335
ワカサギ 60 270
ししゃも 50 175
豆腐 75 90
納豆 50 45
小松菜 80 136
青梗菜 80 80

日本食品標準成分表2010より抜粋






 
ビタミンKチェック表

納豆(50g / パック) 摂取(±)
0
摂取(少)
10
4-5
25
1日1回以上
;40 
 野菜
(
一食)
摂取(±)
0
摂取(少)
10
片手1杯
; 5
十分摂取
;25
   20点未満は、ビタミンK摂取不足が予想される

   


ビタミンK推奨量(250300μg)

食品 一回量(g)  ビタミンK(μg)
50
納豆 50 435
ホウレン草 80 216
小松菜 80 168
にら 50 90
ブロッコリー 50 80
サニーレタス 10 16
キャベツ 50 39
カットわかめ 1 16
のり 0.5 2
日本食品標準成分表2010より抜粋




 
ビタミンD推奨量(1020μg [400800IU])

ビタミンDを多く含む食品
 食品  一回使用量(g) ビタミンD(μg[IU])
 きくらげ 1 4.4 [176]
 きくらげ 60 19.2 [768]
 ウナギの蒲焼き 100 19.0 [760]
 サンマ 60 11.4 [456]
ヒラメ 60 10.8 [432]
イサキ 60 9.0 [360]
 太刀魚 60 8.4 [336]
 カレイ 60   7.8 [312]  
 メカジキ 60 6.6 [264]
 なまり節 30 6.3 [25.2]

     日本食品標準成分表2010より抜粋



日照暴露:一日15分程度の適度な日照暴露も必要です(紫外線に当たることで皮膚でも合成される).






 ■ 骨粗鬆症の治療薬              

ビスフォスフォネート


骨を壊す細胞の働きを抑えて、骨を壊れにくくします.
●4
5年経過すると薬が骨全体に行き渡り、ある一定以上骨量は
 増えないとされています.
カルシウムと一緒に内服すると、効果減少(カルシウムの多いミ
 ネラルウォーター. 服用すると吸収阻害される)
投与開始35年後で骨粗鬆症の治療を見直す必要があります(
 リスク分類をしてから判断します).

 [リスク分類]


  ● 高リスク:
     大腿骨近位部骨密度がTスコアで≦-2.5の場合や椎体ま
     たは大腿骨近位部の骨折がある場合. → 継続投与.
   中リスク:
     大腿骨近位部骨密度がTスコアで>-2.5で椎体や大腿骨
     近位部の骨折がない場合.  → 休薬のリスクとベネフ
     ィットを検討し休薬を考慮.
  ● 低リスク:
     休薬.

 ※)アレンドロネート : 
      重症骨粗鬆症に対してアレンドロネートに活性型ビタ
     ミンD3を併用により、骨折抑制効果が報告されている.


カルシウム薬


骨折リスクを低下させる効果は他の薬剤に比べ弱く、QOLに対
 する効果は認められていないが、わずかながら骨密度の上昇効 果が認められる. 


活性型ビタミンD3


ビタミンD欠乏によりII型筋線維(大腿四頭筋などの近位筋に多
 い)が萎縮します.活性型ビタミンD3補充治療で、II型筋線維が
 再生し転倒を抑制するとされています(転倒発生率が2割程度減
 少)
テリパラチドに併用すると、高カルシウム血症の危険性が上昇.
腸からのカルシウム吸収を助け、骨を強くします.
骨を作る細胞を活発にします.

負のカルシウムバランスが骨吸収亢進に関与してる場合にはよい
 適応です.


エビスタ(ラロキシフェン)


骨に対して女性ホルモンと同様に作用し、骨のカルシウムが体内
 に溶け出すのを抑えます
乳房や子宮では抗エストロゲン作用, 骨に対してはエストロゲ
 ン作用を発揮します

閉経女性のあらゆる原因による死亡率が10%低下するとされて
 います.
閉経後早期での骨吸収亢進に対しては,長期間投薬の必要があり
 良い適応.


カルシトニン薬



痛みを和らげる作用と、骨のカルシウムが体内に溶け出すのを抑
 える作用があります


カルシウム薬


骨量の減少を予防します
カルシウム摂取量の少ない場合に投与します.
カルシウムサプリメントの使用により,心血管疾患のリスクが高
 まる可能性あり(1回に500mg以上摂取しないよう配慮). しか
 し同じ量のカルシウムを食品として摂取した場合にはリスクの可
 能性なし.


ビタミンK2


骨が作られるのを助けます.



 ■ 前回ガイドライン以降に発売された薬の評価  

ボンビバ(ビスホスホネート)


骨密度の上昇効果や背骨の骨折抑制には有効性があります.  
 その他骨折の抑制報告はありません


テリボン・フォルティオ


骨形成を促して、 骨量を増やす強力な薬です。
骨密度の上昇効果や背骨の骨折抑制には有効性があります.
その他骨折の抑制報告はありません
治療を中断しても、骨折抑制効果は暫く続きますが、いずれ無治
 療のままだと骨折率が上昇します


[
適応]

第一選択薬ではありません
他剤投与中にもかかわらず骨折を生じた例, 
高齢で複数の椎体骨折や大腿骨近位部骨折を生じた例, 
骨密度低下が著しい例




  フォルテオ  テリボン
 適応症例 骨折の危険性の高い骨粗鬆症 
用法  一回/日皮下注射 1回/週皮下注射
 投与回数 24ヶ月  24ヶ月
保存方法   28℃で遮光保存  室温で遮光保存



プラリア(抗RANKLモノクローナル抗体)

●骨の成分を溶かす体内の働きを抑え、骨を壊れにくくします。
●骨量を増やす強力な薬です. 
●骨密度の上昇効果およびすべての骨折に対し抑制するとの報告があります. 
●6ヶ月に一度注射します.その他カルシウムとビタミンDの内服が必要です.
●テリパラチドを2年使用したのち、プラリア(抗LANKL抗体薬)
 の継続投与が有用と報告されています. 
   Denosumab and teriparatide transitions in
   postmenopausal osteoporosis (the DATA-Switch
   study): extension of a randomised controlled trial. The
   Lancet, 2015 Sep 19; 386(9999):1147-55.
 今後、テリパラチド使用後の薬剤選択(ビスフォスフォネートな
 ど)に関する報告は多数出ると考えられます.







 ■ 骨粗鬆症治療薬の有効性           

2015年版ガイドラインには、骨粗鬆症治療薬の有効性評価一覧が掲載されていま
(2011年版では推奨度が記載されていました). 効果に関して治療薬の有効性
AC3段階で評価しています.



分類

製品名

 骨密度

椎体骨折

非椎体骨折

大腿骨近位部骨折

カルシウム アスパラCA B  B B
リン酸水素カルシウム B  B B

女性ホルモン

エストリール
プレマリン A A A A
エストラーナ B B B

活性型
ビタミンD3

アルファロール B B B
ロカルトール B B B
エディロール A A B

ビタミンK

グラケー B B B

ビスフォスフォネート

ダイドロネル A B C
ボナロン
フォサマック
A A A A
 アクトネル
ベネット
A A A A
ボノテオ
リカルボン
A A C
ボンビバ  A A B

SERM

エビスタ A A B
ビビアント A A B

カルシトニン

エルシトニン B B C
カルシトニン B B C

副甲状腺
ホルモン

フォルテオ A A A
テリボン A A C
RANKL抗体 プラリア A A A A

その他 

オステン
デカ・デュラミン


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