みずむし (皮膚糸状真菌症:白癬)
■ 皮膚糸状菌(白癬)・・・いわゆる水虫
皮膚糸状菌症(白癬tinea)とは、人間の皮膚の一番外側
の角質層に含まれる、ケラチン(髪、爪、皮膚の角質層を
形成する一成分)というタンパク質に皮膚糸状菌が寄生
した状態です. 環境が大きく関与しています.日本では
、共用施設で裸足になる機会が多く、白癬菌が足に付着す
る機会が多いとされています.菌が付着しても発症にい
たる確率は低く,環境の整備、毎日の入浴,スキンケアで予防
できるとされています.寄生する場所により、表在性と深在性
に分類されます.
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表在性皮膚真菌症 |
深在性皮膚真菌症 |
部位 |
皮膚表面
足・爪・手・体部・股部 |
深い部位におよぶ
真皮,皮下脂肪,内臓など
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菌 |
・皮膚糸状菌症 : 87.1%
・皮膚粘膜カンジダ症:9.7%
・マラセチア症 : 3.2% |
・スポリトリコーシス
・黒色真菌
・クリプトコックス症 |
頻度 |
足(63%)>爪(34.1%)>体部(7.4%)>股部(4.1%) |
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日本医真菌学会の疫学調査2006
■ 白癬をもらいやすい環境
● 白癬菌保有者との同居.
● 集団生活(老人ホーム・介護施設など).
● 共同施設の使用(プール・スポーツ施設・入浴施設など).
■ 白癬の診断方法
白癬菌症以外でも同じような皮膚になる病気がありま
す.診断は皮膚、爪、毛などを顕微鏡で観察したり、培
養検査をして白癬菌の存在を確認します.
■ 足の白癬
分 類
● 趾間型 :4~5趾の間に多い.春から夏
にかけて多く、涼しくなると
症状が治まってきます.かゆみ
や痛みを伴うことが多く、足
の指の間の皮が剥けたり、白
くふやけたりします.
● 小水疱型 :
● 角質増殖型:かかとの皮膚が厚なります
年中持続し落屑(皮がポロ
ポロ落ちる)を伴うが、か
ゆみは少ない.
※)複数の病型を呈することも多い.
起こしやすい条件
● 足の指間が狭い.
● 蒸れ・多汗による湿潤環境.
● 皮膚の傷.
● 靴の長期間着用(1日8時間以上).
● 中高年男性
放置すると
● 難治性の角質増殖型へ進展します.
● 他の部位(手・体幹・股部)へ拡大します.
● 細菌感染症(化膿)を合併します.
放置せず早期より治療することをお勧めします.
治療方法
● 塗り薬 : 最低1ヶ月は続けましょう.足底全体に塗る
ことが重要です.また家庭内の水虫菌を除去
しない限り、再燃を繰り返します.
● 飲み薬 : 角質増殖型,難治性,再発性が適応です.
‣ テルビナフィン塩酸塩1日125mg(1-2ヶ月)
‣ イトラコナゾール400mgパルス治療(1-3回)
※) 角質増殖型は2ヶ月,難治性・再発性は1ヶ月
内服.
‣ ネイリンカプセル100mg一日一回1カプセル
(12週間). 2018年販売の新薬です.
併用禁忌薬はありません.しかし投与検討例が
少なく、効果は今のところ不明です.
● びらん(ただれ)合併例は抗生剤を併用します.またびらん部に
は亜鉛華軟膏を使用し、びらん軽快後には抗真菌薬の塗り薬を
使用します.
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テルビナフィン塩酸塩 |
イトラコナゾール |
警告 |
肝障害・血球現象 |
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禁忌 |
・重篤な肝障害
・血液障害 |
・併用禁忌薬あり
・重篤な肝障害
・妊婦・授乳婦 |
高齢者 |
・慎重投与 |
・用量調節の必要なし |
妊婦 |
・安全性未確認 |
・ラットで催奇形性 |
産婦・授乳婦 |
・ラット乳汁中への移行 |
・人で乳汁中への移行 |
その他 |
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血糖降下剤併用で血糖低下 |
テルブナフィン塩酸塩とイトナコナゾールの薬剤選択基準
手指爪のみに限局 |
非皮膚糸状菌による爪真菌症 → イトラコナゾール |
足趾に病変あり |
・血液検査で中等度以上の異常
→ 外科的治療+外用薬
・血液検査で軽度の異常
→ イトラコナゾール>テルビナフィン塩酸塩
・検査値に異常なし
‣併用薬に問題あり
→ イトラコナゾール<テルビナフィン塩酸塩
‣併用薬に問題あり
→ 患者と相談のうえで決定 |
(日皮会誌2004; 114: 2098-2102, 真菌誌 2008; 49:1-3)
■ 手足の爪白癬菌症・・・いわゆる爪の水虫
特徴
● 足の第1趾に多い.
● すべての爪が同時に感染する頻度は少ない.
分類(英国皮膚科学会)
● 表在性白色爪真菌症SWO:
superficial white onychomycosis
爪表面の傷口から皮膚糸状菌が侵入し生じる.
爪表面に点状・斑状の白い膜をつくる.
● 近位爪甲下爪真菌症PSO:
proximal subungual onychomycosis
爪の根本から皮膚糸状菌が侵入して生じます.
頻度は比較的少ない.
● 遠位側縁部爪甲下爪真菌症DLSO:
distal and lateral subungual onychomycosis
爪先が厚くなり、黄色・白色に変色。
爪を削るとボロボロと細かい爪の破片が取れます.
爪の混濁,肥厚,爪甲下角質増殖をきたします.
爪白癬の最も多いタイプです.
● 全異栄養性爪真菌症TDO :
Total dystrophic onychomycosis
上述のSWO,PSO,DLSOが進行し、爪全体に病変が
広がります.
爪全体が変形します.
放置すると
● 美容的問題.
● 爪を切れなくなります.
● 靴下が破れます
● 靴が履けなくなります.
● 足白癬が進行再発します.
治療方法
原則は内服薬(飲み薬)で治療しますが、一部外用薬(塗り薬)を
使う場合もあります.
● 内服
‣ テルビナフィン125mgを6ヶ月服用します.
‣ イトナコナゾール400mgを3クール内服します.
(1週内服-3週休薬を1クール).
※)6ヶ月後に爪の混濁が残存し、さらに2~3ヶ月て
も混濁部が移動しない場合は、再度内服が必要です.
一緒に飲めない薬 |
ピモジド(適応:統合失調症など)
キニジン(適応:不整脈など)
ベペリジル(適応:不整脈など)
トリアゾラム
シンバスタチン
アゼルニジピン
ニソルジピン
エルゴタミン
ジヒドロエルゴタミン
エルゴメトリン
メチルエルゴメトリン
バルデナフィル
エプレレノン
ブロナンセリン
タダラフィル
アスナプレビル
バニプレビル
スポレキサント
イブルチニブ
チカグレロル
アリスキレン
ダビガトラン
リバーロキサバン
リオシグアト
シルデオフィル |
● 塗り薬(10%エフィコナゾール爪外用液・5%フレリコナゾール爪外用液) [利点]
・内服を希望しない方の選択肢が増えました.
・肝機能障害などの副作用がありません.
[欠点]
・爪混濁面積が20~50%程度の爪にしか効果
ありません(SWOがよい適応です).
・重症例に対する治療成績はありません.
・塗った爪にしか効きません.
・複数趾の爪白癬に対しては治療困難です.
・足白癬も伴う場合は、外用薬の併用が必要です.
■ 爪カンジダ
①カンジダ性慢性爪郭炎
● 水仕事が多い人の爪郭部に多いとされています
● 爪甲が変形します.
● 爪上皮は消失し、甲爪郭部で爪甲背面に隙間を生じます.
● 治療に一年を要します.
②カンジダ性爪甲剥離症:
● 爪の先端から爪甲が浮き上がり、白く濁ります.
● 手指の爪に多い.軽度に角質が増殖します.
● 治療に一年を要します.
③爪甲カンジダ症:
● 爪甲が白く濁り.爪の厚みがします.
● 手指の爪に多いとされています
● 稀に足趾の爪にも出現します.
● 治療に6ヶ月を要します.
テルビナフィンは効果ありません.
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