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 ■ 慢性便秘症                      


 便秘の定義



 排便の訴えは人それぞれであり,便秘は極めて曖昧に定義されていました。
便秘症は決して命に関わる病気ではありませんが、生活の質を著しく低下させます。 最近では「慢性便秘症診療ガイドライン2017」で、「本来体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。排便回数や排便量は個人差があるので、便秘の定義を明確にするのはとても難しいのです。排便の回数に関わらず、

 ❑ 排便回数が減少し、腹痛や腹部膨満感がある(すっきりしない)。

 ❑ 便が硬く、排便が困難や過度の怒責を必要とする(苦労する)。

 ❑ 便は軟らかいが排便困難、
過度の怒責、残便感とそのための頻回便。

 等と表現されています。



 ■ 便秘症の頻度・分類・評価               

 便秘の頻度



 現代日本では多くの人が訴える症状のひとつです。日本において便秘症は、男性2.5%、女性4.6%に認められ、20~60歳では女性に多く、80歳以上になると男女差はなくなると報告されています(2016年国民生活調査)。 



 便秘の原因分類



 便秘は「器質性」と「機能性」に大別します。さらに「器質性」を「狭窄性」と「非狭窄性」分類します。そして「非狭窄性」及び「機能性」をさらに「排便回数の減少型」と「排便困難症」に分類し、治療方法を選択します。


  原因分類  症状分類  専門的分類 病態および疾患 
器質性 狭窄性     ・大腸癌,クローン病,虚血性大腸炎など
非狭窄性  排便回数減少型   ・巨大結腸症
排便困難型 器質性便
排出障害
・直腸癌,直腸重責,巨大直腸,小腸瘤,
 S状結腸瘤など
機能性 排便回数減少型 大腸通過
遅延型
・特発性
・症候性:代謝内分泌疾患,神経筋疾患,
     膠原病,便秘型,過敏性腸症候群
・薬剤性:向精神薬,抗コリン薬,
     オピオイド系薬など
大腸通過
正常型
経口摂取不足(食物線維摂取不足を含む)
排便困難型 硬便による
排便困難
・硬便による排便困難
・残便感(便秘型過敏性腸症候群など)
機能性
排出障害
骨盤底筋協調運動障害,腹圧低下,
直腸感覚低下,直腸収縮力低下など

                   
                 (味村俊樹他 : 日本大腸肛門病会誌 201972583-599)
             


機能性便秘は、自律神経の不具合で起こる便秘です。生活習慣の乱れが主な
原因とされています。




 便秘の評価



客観的な指標として、便秘スコア(CSS)を用いて評価しましょう。
                                  /30点

原因分類 0 1  2 3 4
排便回数 2回以上/週
 2回/週 1回/週  1回未満/週  1回未満/月
排便困難(排便時の苦痛)  なし  まれに  ときどき  たいてい  いつも
残便感  なし  まれに  ときどき  たいてい  いつも
腹痛  なし  まれに  ときどき  たいてい  いつも
排便に要する時間  5分未満  5~10分  10~20分  20~30分  30分以上
排便補助の有無  なし  下剤  摘便or浣腸    
トイレに行っても出なかった回数/日  0  1~3  3~6  6~9  10回以上
排便障害の病悩期間(年)  0  1~5  5~10  10~20  20年以上
   
                     ・まれに : 1/月未満  ・ときどき : 1/月未満だが1/週未満
                     ・いつも : 1/日以上  ・たいてい : 1/週未満だが1/日未満
 
 

 ブリストル便形状スケール




 ■ 便秘症の治療(生活習慣)                

 規則正しい生活,適度な運動,十分な睡眠,規則的な排便習慣から開始します。

 食生活の改善



 ❑ 朝食を食べましょう。

 ❑ 食物線維を一日25g以上食べましょう。穀物、
   野菜、きのこ、果物(リンゴ、梨、バナナ、キ
   ウイ、ドライフルーツ)、豆類、海藻に多く含
   まれています。

 ❑ マグネシウムを多く含むもの(海藻、玄米、
   納豆、ナッツ類など)を食べましょう。

 ❑ ヨーグルトや乳酸菌飲料を食べましょう。


 ❑ 脱水の予防も便秘予防に効果的です. 目安として一日1.5L程度摂りま
   しょう。




 運動習慣の改善



 ❑ 一日11520分程度のウォーキングなど、
   適度な運動をしましょう。



 排便習慣・環境



 ❑ 食後30分ぐらいにトイレに行っていきんでみ
   ましょう。便意を我慢せずにトイレに行きま
   しょう。

 ❑ 排便姿勢は、前屈し腹筋に力が入るようにし
   ましょう。床に足が届かない場合は、足台な
   どを使用しましょう。




 ■ 便秘症の治療(薬物療法)                

 ❑ 便秘薬の概略



 ❑ 薬剤の選択には、従来の塩類下剤や刺激性下剤などから始め、徐々に
   増量します。


 ❑ 薬との相性には個人差があり、様子をみながら薬の種類や量を検討し
   ていく必要があります。


 ❑ 便秘スコア(CSS)など、客観的な指標を用いて評価します。

 ❑ 従来の薬剤で、効果が得られない場合や、多剤併用により相互作用の
   問題が心配される場合は、ルビプロストン、エロビキシバット、リナ
   クロチドなど新規薬剤を試します。

 ❑ 従来の薬に比べ、新規薬剤は薬代が高くなります。


 ❑ 排便回数を1回/2日~2回/日に、便性状をブリストルスケールで3~5
   型に調節します。




 主な便秘薬


                 

 浸透圧性下剤(塩類下剤)  浸透圧で腸内に水分を移動し、便容量を増大させます。
 酸化マグネシウム ・錠剤です(1錠 ¥5.7)。
毎日服用し、内服量を調整します。
・高Mg血症に注意(腎機能低下,ビタミンD3剤内服者等)

・併用により効果が減弱する薬剤 : テトラサイクリン系,ニューキノロン系,ビスホスホネート,セレコキシブ,ロスバスタチン,ラベプラゾール,ガバペンチン,ポリカルボフィルカルシウム等。

・効果発現時間:内服後8~10時間
・大量の水と服用すると、より効果的です。

  
 浸透圧性下剤(浸潤性下剤) : 軟便化剤(界面活性作用で水分を浸透+大腸刺激下剤。
 DSS合剤
(ビーマス配合
®)
・錠剤です(1錠 \5.7 )
・腸管刺激性は弱く(センノシドの1/10)、6/日まで増量可です。

・小児(2 歳以上)に使用可能です。

・効果発現時間:内服後1~3日。
156錠を就寝前、又は16錠を23回に分割し内服。
・習慣性は生じにくいが、他の機械的下剤に比べ作用は弱い。
  
  浸透圧性下剤(高分子化合物) : 大腸に到達した水分により、便を軟化・増大させます
 ポリエチレングリコール
(モビコール配合内容剤LD
®
)
・粉末薬で、水・お茶・リンゴジュースなどに溶かして内服します。
用法:12包(11回)内服.・113回、最大1
 6
包まで(1回量4包まで)。
・即効性はなく、増量は2日以上間隔をあけて行い、増量は1
 量として2包まで。
・多量の水分摂取が必要です。
・生理的な排便が得られ、排便回数減少型便秘によい適応です。
・値段:1包 \83.6
  
 刺激性下剤(アントラキノン) : 大腸粘膜・神経の刺激により蠕動運動を亢進します。
 センノシド® ・錠剤です(1錠 \5.1)。
浸透圧性下剤で排便が全くなかった日の眠前に内服します。
・連用により耐性(効果減弱)や習慣性(依存)を認めます。
・連用により大腸メラノーシスを起こします。
・効果発現時間:内服後8~10時間
  
 刺激性下剤(ジフェニール系) : 大腸粘膜・神経の刺激により蠕動運動を亢進します。
ピコスルファートナトリウム 腸蠕動亢進および軟便化(腸内での水分吸収を抑制)。
微量調節が可能です。
・連用による耐性や習慣性は少ないとされています。
・効果発現時間:内服後7~12時間。
  
 上皮機能変容薬 : 腸管内へ水分分泌を促進、便の水分含有量を増やし排便を促します。
 ルビプロストン
(アミティーザ
®)
・カプセルです(1錠 \120.4)。
用法:12回朝食後と夕食後(微調整不可)。

・酸化マグネシウム単独で有効でない場合に使用します。
・空腹時の内服により、嘔気を起こすことがあります。
・連用しても耐性は認められません。
妊婦および妊娠の可能性(若い女性)のあるかたは禁忌です。
・重度の肝障害/腎障害のある方は一日一回から開始します。
・効果発現時間:内服後24時間
 リナクロチド
(リンゼス
®)
・錠剤です(1錠 \87.5)。
用法:1日1回食前に2錠内服。
・神経の過敏性を改善し、腹痛や腹部不快感も改善します。

・酸化マグネシウム単独で有効でない場合に使用します。
・腹痛を伴うような便秘の方に有効と思われます。
・下剤の効果を期待する場合は、食後内服が勧められます。
・効果発現時間:内服後24時間
  
 胆汁酸トランスポーター阻害薬 : 腸での胆汁酸再吸収を阻害し、軟便化+腸蠕動亢進.
 ポエロキシバット
(グーフィス®
)

・錠剤です(1錠 \104.8)。
・用法:
1日1回食前に2錠内服(食前でないと効果なし)。

・腸蠕動促進作用はセンノシドほど強くないが、腹痛が多い(19%)。

・重度の肝障害のある方は効果が減弱します。
  
 膨張性下剤 : 高い吸水性・保水性で腸に水分を保持し、排便を促進します.
ポリカルボフィルカルシウム 
( ポリフル
®)
・錠剤です(1錠 \13.2)。
・過敏性腸症候群の便秘型および混合型に適応です。
・腸内容物の通過時間を短縮させ排便回数を増加させます
腹痛や腹部膨満等を改善させます。

1日量1.53.0 g3回に分けて,食後に内服します。
必ずコップ1杯程度の水とともに内服してください。
  
 漢方薬
大黄甘草湯®  ・効果は比較的弱く、中等症以下の便秘に用いられます。
体力にかかわらず使用できます。便秘、腹部膨満 など 
 調胃承気湯® ・大腸刺激、塩類下剤様作用があります
・大黄甘草湯に塩類下剤(芒硝)を含有させ効果を強めた薬です。
 桂枝加芍薬湯® ・体力中等度以下の腹部膨満感のあるしぶり腹、腹痛、便秘。
芍薬による腸運動調節作用が利用されます
麻子仁丸®  ・大黄(刺激性下剤)+麻子仁(潤腸作用)を含みます。
高齢者で乾燥便や兎糞便に対して用います。
 潤腸湯® 体力中等度又は虚弱で、ときに皮膚乾燥などがある方の便秘
高齢者で便が硬く(兎糞便)、腸の運動も弱っている方。
・麻子仁丸ににてますが、効果は若干弱めです。
 大建中湯® 山椒で腸の蠕動運動を促進して、便通を改善します。

・腹冷え、痛み、腹部膨満に効果を認めます。
・虚弱者の腹部膨満、鼓腸、ガス疝痛。

 桃核承気湯® ・大腸刺激、塩類下剤様作用があります。
体力中等度以上で、のぼせて便秘がちな方、痔疾 など
 防風通聖散® ・大腸刺激、塩類下剤様作用があります。
・体力充実、腹部皮下脂肪が多く、高血圧や肥満に伴う便秘。
   


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