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         高血圧症
        Hypertension
  

 

 2019年に引き、2025年に6年ぶりとなる新しい高血圧管理・治療診療ガイドライン2025JSH 2025)が、改訂されました。主な変更点は、高血圧の新しい基準、高齢者の高血圧の基準値を「ADL」を重視し個別に検討するなどです。




 ■ 血圧の測定・評価について              

      朝の測定
    ・起床後1時間以内
・排尿後
・朝の薬を飲む前
・朝食前
 
 
       夕の測定
 
・入浴直後は避ける
・飲酒直後は避ける
・就寝前に測る


      測定のポイント
    ・朝、夕の一日に2回 測定しましょう。
・7日間(少なくとも5日間)の平均値で評価しましょう。
・診察室血圧と家庭血圧が違う場合,家庭血圧での診断/治療を優先します。
     「推奨の強さ1/エビデンスの強さB/ 合意率 100%」




 ■ 血圧の変動について                 


  早朝高血圧     昼間高血圧
アルコール,寒冷,起立性高血,動脈硬化   精神的ストレス,身体的ストレス ,身体活動度
 
 
  夜間高血圧     白衣高血圧
循環血液量の増加(心不全,慢性腎臟病)
自律神経障害(起立性低血圧) ,睡眠時無呼吸症候群,うつ状態,認知機能低下

高血圧患者の15~30%(詳細は不明)




 ■ 高血圧の管理・治療方針について           


年齢や合併症を問わず

 ・ 診察室血圧 : 13080Hg未満 を基本目標とします。

 ・ 家庭血圧(朝・晩の平均): 12575 Hg未満を目安とします。

   ただし、「めまい・ふらつき・腎機能低下・高齢で虚弱傾向」などが

   ある場合には、個別に目標値を調整します。

      「推奨の強さ1/エビデンスの強さ A/ 合意率 100%


  諸外国の治療目標
 ・アメリカ (AHA/ACC 2025) 
 ・ヨーロッパ (ESC 2024) 
130/80Hg未満  
120129Hgにコントロール



 ■ 血圧と生活習慣ついて                

生活習慣の改善は、治療中も重要とされています。

  ・適正体重の維持:BMI (体重[kg] ÷身長[m]2) を25未満が目標。

  レジスタンス運動(スクワット、腕立て伏せなど)810種類
  を24セット (1セット 8~15回)120分程度が推奨。
      「推奨の強さ1/エビデンスの強さA/ 合意率 100%
有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、トレッドミル、自転車
  エルゴメーター、エアロビクス、水泳)
    例1)毎日1回につき 30分以上が推奨されます。
    例2)1回につき10分以上継続し、1日40分以上、合計
       時間150~300分/週を実施します。

有酸素運動+レジスタンス運動の場合:
  有酸素運動を毎日30分+レジスタンス運動を120分、
  週23回程度実施しましょう。


  大量飲酒は、高血圧や脳卒中、アルコール性心筋症、心房細動、
  睡眠時無呼吸症候群、がんの原因にもなり、死亡率を高めます。
・飲酒制限した場合、12週間で降圧が認められます。

エタノールとして男性20-30mL/日以下、女性10-20mL/日以下

 

  ※)エタノール約2030mL とは
   日本酒1合、ビール500㎖、日本酒1合、焼酎半合、
   ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯


  加熱式たばこなどの新型たばこを含め、禁煙が推奨されます。

  冬(内外気温の低下)は、血圧上昇や変動、入浴時の死亡リスク
  が高いことが知られています。
入浴時は、脱衣所の室温調整に注意しましょう。

  成人では6時間以上の睡眠が勧められます。

高齢者では8時間以上にならないことが推奨されています。 


  "いきむ"は、血圧上昇により心血管イベントの引き金になります。

    心理的・社会的ストレスにより高血圧発症リスクが2倍以上に
  なるとされています。

 

塩分制限 : 減塩目標は6g/日未満です。
食塩以外の栄養素と食事パターン : カリウムを多く含む野
  菜、果物低脂肪乳、乳製品などを積極的に摂取しましょう。
降圧に有効なその他の栄養素も複合的に摂取出来るDASH食や、
  地中海食も勧められます。
Na/K
比の低下に努めましょう(尿Na/K比<4)。K制限が必要
  な場合は例外です。

減塩しつつKを摂取するには

  ➢野菜350g/
  ➢果物200g/
  ➢低脂肪牛乳、乳製品、緑茶、コーヒー
などを組み合わせて
   摂取しましょう。




 ■ 血圧と降圧薬について                

 [長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬]
 ・アムロジピン、ニフェジピン、アゼルニジピン、シルニジピン、ペニジピン など
 
  [ARB:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬] 
 ・アジルサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、イベルサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタンなど
 
 [RA系阻害薬] 
  ・エナラプリル、エナラプリル、イミダプリル、カプトリル、アラセプリル など
 
 [サイアザイド系利尿薬]
 ・トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド など
 ・
注意点腎機能低下(eGFR<30)では、効果を期待できません。
 
  [ループ系利尿薬]
 ・フロセミド、トラセミド、アゾセミド など
 
 [β1選択性β遮断薬]
 ・ビソプロロールフマル、メトプロロール、アテノロール など
 
 [MR拮抗薬]
 ・スピロノラクトン(心不全,重度高血圧)、エプレレノン(心不全,高血圧)、ミネブロ(高血圧
  ,CKD)、ケレンディア(糖尿病性腎症) など
 
 [ARNI] ARB(バルサルタン)とネプリライシン阻害薬(サクビトリル)の合剤
 ・エンレスト
 ・注意点:ACE阻害薬との併用は禁忌(切り替えは36時間の休薬が必要)



 ■ 血圧と臓器障害ついて                


  脳血管障害
  ❑ 脳心血管病再発予防には、収縮期血圧を130Hg未満に降圧することが、
   強く推奨されます
      「推奨の強さ1/エビデンスの強さ A/ 合意率 100%



  心肥大
 

  ❑ 降圧治療で心肥大を退縮には、持続的/十分な降圧が必要です。

  ❑ 肥大退縮効果に優れる薬。

   RA系阻害薬(エナラプリル、イミダプリル、カプトリルなど)

   長時間作用型Ca拮抗薬(アムロジピン、ニフェジピン、アゼルニジピン、シルニジピン
    ペニジピンなど)



  冠動脈疾患
  ❑ 心不全や脳卒中の予防に130/80 Hg未満のコントロールが必要です。

  ❑ 動脈硬化による狭心症の場合の降圧薬

   内因性交感神経激作用をもたないβ遮断薬(ビソプロロール、アテノロールなど)

   長時間作用型Ca拮抗薬(アムロジピン、ニフェジピン、アゼルニジピン、シルニジピン、
    ペニジピンなど)

  ❑ 攣縮性狭心症の場合の降圧薬
   Ca拮抗薬(ペニジピン、ニフェジピン、ジルチアゼムなど)



  心筋梗塞後
 

  ❑ 標準的薬物療法

   ACE阻害薬(忍容性がない場合ARB) +β遮断薬の併用療法

  ❑ 重症左室駆出率低下例

   RA系阻害薬からARNIへ変更(36時間以上の休薬期間が必要)
    MR
拮抗薬(腎機能障害時は、高K血症や腎機能に注意)

   ➢うっ血改善:利尿剤


  心房細動

  ❑ 130/80Hg未満にコントロール。

  ❑ RA系阻害薬による心房細動発症予防効果は明確ではないが、 左室肥大
   心不全を合併する患者における心房細動新規発症・再発の予防には有効
   であると考えられています。

  ❑ 抗凝固療法、心拍数コントロール、厳格な血圧コントロールが望ましい
   とされています。

  ❑ 厳格な降圧治療は、心不全発症を予防します。


  左室駆出力の低下した心不全(HFrEF) EF<40%
  ❑ 標準的薬物療法

   ➢ACE阻害薬(忍容性ないならARB、効果不十分ならARNI)+β遮断薬
   +MR拮抗薬+SGLT2阻害薬の併用療法

  ❑ 降圧不十分な場合

   長時間作用型Ca拮抗薬(アムロジピン、ニフェジピン、アゼルニジピン、シルニジピン、
   ペニジピンなど)を追加

   ➢RA系阻害薬からARNIへ変更(36時間以上の休薬期間が必要)
   MR
拮抗薬(腎機能障害時は、高K血症や腎機能に注意)、MR拮抗薬


  左室駆出力が保たれた心不全(HFpEF) EF≧50%
  ❑ 収縮期血圧を130㎜Hg未満に降圧することが、強く推奨されます
      「推奨の強さ1/エビデンスの強さC/ 合意率 100%

  ❑ 標準的薬物療法

   ➢ACE阻害薬、ARBCa拮抗薬、サイアザイド系利尿薬β遮断薬、

   ➢SGLT2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガ)

  ❑ 降圧不十分例

   ➢RA(系統)阻害薬からARNI拮抗薬変更、MR拮抗薬



  解離性大動脈瘤 / 腹部大動脈瘤
 

  ❑ ARBまたはACE阻害薬を主に用います。利尿薬・β遮断薬も適宜併用します。

  ❑ 降圧目標:130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)。

  ❑ 減塩:6g/日未満

  ❑ 禁煙


  慢性腎臓病
 

  ❑ 収縮期血圧を130Hg未満に降圧することが、強く推奨されます
      「推奨の強さ1/エビデンスの強さ A/ 合意率 100%
  ❑ 蛋白尿合併例 : 第1選択薬として、RA系阻害薬が推奨されます
      「推奨の強さ1/エビデンスの強さ A/ 合意率 100%

  ❑ 蛋白尿非合併例 : 第1選択薬として、RA系阻害薬、Ca拮抗薬、
  サイアザイド系利尿薬のいずれかが提案されます
      「推奨の強さ2/エビデンスの強さC/ 合意率 100%



  糖尿病
  ❑ 治療開始血圧:140/90Hg以上。
  ❑ 130-139/80-89Hgは,生活習慣修正による降圧を試みます(1ヶ月未満)

  ❑ 診察室での収縮期血圧は130Hg未満、家庭血圧は125Hg未満を目標と
   します。

  ❑ 推奨される薬剤:ARB,ACE阻害薬,Ca拮抗薬,少量のサイアザイド系利尿薬。

  ❑ アルブミン尿,蛋白尿合併例:ARBACE阻害薬が優先されます。
  ❑ 脳血管病の発症および死亡予防には、130/80Hgにコントロールするこ
   とが、強く推奨されます。

      「推奨の強さ1/エビデンスの強さB/ 合意率 100%  

  ❑ RA阻害薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬の使用が、弱く推奨されます。
      「推奨の強さ1/エビデンスの強さB/ 合意率 100%
 

             

  肥満 / メタボリックシンドローム
 ❑ 食事療法や運動療法による3%以上の減量で有意な降圧効果が期待できます。


  睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
 

  ❑ OSASを合併する高血圧患者では,減塩・減量と並行して、持続陽圧呼吸
  (CPAP)療法などを行い、夜間血圧を含めたより厳格な降圧療法を行います。



  高尿酸血症
  ❑ 腎機能低下や心血管トラブルと関連することが示唆されています。
  ❑ 尿酸値が7.0 /㎗以上の場合、肥満の是正、プリン体・果糖・ アルコール
   の摂取制限、有酸素運動などの生活改善が必要です。

  ❑ 血清尿酸値が8.0/㎗以上の場合、尿酸降下薬の開始を考慮し、血清尿酸値
   6.0
/㎗を目標とします。
  ❑ 降圧薬の選択

   利尿薬(サイアザイド系,ループ)やβ遮断薬は、尿酸値を上昇させます。
   Ca括抗薬,ARBACE阻害薬は尿酸値に影響を及ぼしません。
   一部のARB(ロサルタン、イルベサルタン)ARNI(エンレスト)は、尿酸
    値を低下(尿酸排泄促進作用)させます。
   尿酸降下薬の選択は,病型分類に基づいて行い,腎機能低下者では選択す
    る薬剤や用量に注意を要します。新規キサンテンオキシダーゼ阻害薬は病
    型や腎機能低下の有無によらず有効な可能性があります.



  気管支喘息
  ❑ 使用可能な薬: β1選択性β遮断薬(ビソプロロール、メトプロロール、アテ
   ノ
ロールなど
)
、Ca
括抗薬、ARB、少量の利尿薬。
  ❑ 使用不可の薬: αβ遮断薬(カルベジロールなど)ACE阻害薬


  肝臓疾患
 

  ❑ 重症の肝機能障害では、β遮断薬(β1選択性β遮断薬は除く)αβ遮断薬(
   ルベジロールなど)は肝硬変患者の消化管出血と死亡のリスクを低下させる
   可能性があります。

  ❑ RA系阻害薬は、肝臓の線維化を抑制し予後を改善する可能性があります。


  女性
  ❑ 閉経前後より、急激に血圧が上昇する傾向があります。




 ■ 高齢者の高血圧症について               

✔ 忍容性のある場合の降圧目標は、収縮期血圧130 Hg未満を強く推奨。

✔ 精神・身体機能低下の有無により降圧目標値 : 個別に判断が必要。

      「推奨の強さ1/エビデンスの強さ A/ 合意率 95.5%



【高齢者に特徴的な病態/合併症】

  収縮期高血圧が、著しく上昇(血管の弾性低下)

  血圧変動が大きく、治療薬による有害事象が生じやすい。

  背景に応じて治療薬を検討(75歳以上)

  治療薬を1/2から開始し、段階的に増量。

  多剤服用は、有害事象発生リスク増大。

  治療薬の減量は、1剤ずつ。

  フレイルを有する場合、食事療法は食欲を減退させない範囲で。

  フレイルを有する場合、転倒リスクがに注意。



75歳以上の高齢者の「ADL」(Activity of Daily Living: 日常生活動作)によって、
降圧目標が変わっています

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  自力で通院可能 通院が要介助 外来通院が困難 エンド・オブ・ライフ
基本的ADL
食事,整容,
排泄,更衣,
入浴,移動,
階段昇降等
保たれている  保持~低下 低下  高度低下 

手段的ADL
買い物,金銭
管理,電話,
調理,外出等

 低下 高度低下 
         
目標血圧 診察室血圧
 130/80
未満
家庭血圧
 125/75未満
診察室血圧
 120~140
家庭血圧
 115~135
収縮期血圧
 120~150
家庭期血圧
 115~145

個別判断

目安収縮期血圧
140~160

その他 収縮期血圧(診察室) 120未満
収縮期血圧(家 庭)115未満
で減薬検討を考慮
 
減薬・中止検討
新規治療不可



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