甲状腺結節(腫瘤)
■ 甲状腺結節(腫瘤)について
甲状腺結節(腫瘤)は無症状のことが多く,偶然に発見されることが多い病気です. 健康診断などで偶然にみつかることが多く,甲状腺超音波検査(エコー)では、成人の20%以上(男性20.08%,女性26.7%)に発見されています(日本甲状腺学会編:甲状腺結節取扱いガイドライン2013.南江堂,2013.).また1984~1987年の疫学調査(長崎市)では,40歳以上の健康成人の4.5%に甲状腺腫瘍が認められたとも報告されています.米国でも,人口の4~7%に甲状腺結節があるとされており,
けしてまれな病気ではありません.
いっぽう甲状腺結節(腫瘤)で治療を必要とするものはごく一部
であり,多くは経過観察(定期的な検査)でよいとされています.
■ 甲状腺結節(腫瘤)の種類
甲状腺結節(腫瘤)は,過形成,良性腫瘍,悪性腫瘍に分けられます.
■ 過 形 成
● 腺腫様甲状腺結節(腺腫様甲状腺腫・多結節性甲状腺結節)
■ 良 性 腫 瘍
● 濾胞腺腫
■ 悪 性 腫 瘍
● 乳頭癌 : 甲状腺癌の80~90%程度を占めます.
予後はきわめて良好です.しかし術後10年以上
経過してから再発することもあり,長期にわたり
経過観察が必要です.
● 濾胞癌 : 甲状腺がん全体の5%程度を占めます.
予後はきわめて良好です.
● 髄様癌 : 甲状腺がん全体の1~2%程度とまれです。「家族性
に発生するもの」と「多発性内分泌腫瘍(MEN)2型
の一部として発生するもの」があります.
● 悪性リンパ腫:橋本病が発生母地となっている可能性が高いと
されています.
● 未分化癌 : 甲状腺がん全体の1~2%程度とまれです。大部分
は分化癌(乳頭癌,濾胞癌)の未分化転化で生じると
考えられています. 予後はきわめて不良であり,
90%以上が1年以内に亡くなります.
● 転移性癌 : 非常に稀ですが、腎癌,消化器系の癌,肺癌,
乳癌などの転移が報告されています.
■ 甲状腺結節(腫瘤)の性状
甲状腺結節(腫瘤)は,症状がほとんどありません.その多くは,
家族や友人が首のしこりに気づいたり,健康診断で偶然に発見されます.
■ 甲状腺結節(腫瘤)の検査
■ 超音波検査(エコー)
甲状腺結節(腫瘤)にたいし、もっとも有効な
検査です.結節(腫瘤)の大きさ,かたち,内部の
性状,周囲との関係,石灰化の有無、リンパ節腫大
の有無などを確認できます.その結果をもとに,超
音波診断基準に基づき,穿刺吸引細胞診(FNAC)
の適応を検討します.
■ 穿刺吸引細胞診(FNAC)
超音波を用いて注射の針で,結節(腫瘤)のなかの細胞を採取し,
顕微鏡で癌細胞の有無を確認します. その適応(するかしないか)は、
嚢胞性病変か充実性病変かでかわってきます.
◆超音波検査(エコー)超音と穿刺吸引細胞診(FNAC)で、ほとんどの
甲状腺結節(腫瘤)が診断可能です.
・日本超音波医学会「甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準」
・日本甲状腺学会「甲状腺結節取り扱い診療ガイドライン2013」
を参考に判断します.
■ 血液検査
● 甲状腺のホルモン値(fT3,fT4,TSH)
・分化癌(乳頭癌・濾胞癌)では正常です.
・Plummer病では,fT4が上昇,TSH が
低下します.
・未分化癌・悪性リンパ腫では,低下する
ことがあります.
● サイログロブリン
・他の甲状腺の病気でも高くなるため,癌の診断
には役立ちません.ただし,再発のチェックに
は有用です.
● カルシトニン・CEA
・髄様癌で高くなります.
■ CT
・癌診断には有効ではありません.しかし、腫瘍
(結節)の周囲へのひろがりを確認するには有用です.
■ MRI・PET
・癌診断には有効ではありません.
■ シンチ
・未分化癌・悪性リンパ腫の転移の診断,Plummer病の診断には有用です.
治療方法と予後にかんしては
・日本甲状腺学会「甲状腺結節取り扱い診療ガイドライン2013」
・日本内分泌外科学会・甲状腺外科学会「甲状腺腫瘍診療ガイド
ライン2010年版」を参考に判断いたします.
■ 甲状腺結節(腫瘤)の治療方針
■過形成・良性腫瘍(良性結節)
・腺腫様結節(過形成結節) : 経過観察が基本です.
・濾胞腺腫(腫瘍) : 経過観察が基本ですが、大きな腫瘍(4cm
以上等),増大傾向,圧迫症状,機能性結節,癌が否定できない
場合は手術適応となります.
■分化癌(乳頭癌・濾胞癌
・手術が原則です.年齢,被膜外浸潤,腫瘍径,リンパ節転移,
遠隔転移,腫瘍の分化度を含むTNM分類で進行度を評価し,治療方法を
検討します.
・再発の可能性が高い場合は,甲状腺全摘術+TSH抑制療法を検討します.
・再発の可能性が高い場合は,甲状腺全摘術+放射性療法を検討します.
■髄様癌
・散発性では分化癌に準じた外科的治療を行います.遺伝性では
甲状腺全摘術が推奨されます.
■未分化癌
・治癒よりもQOL(生活の質)の向上を目的に,集学的治療(手術,
化学療法,放射線療法など)を適宜選択します.
■悪性リンパ腫
・病期確定後,化学療法,放射線療法を行います.
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