ヘルペスウイルス感染症
帯状疱疹(herpes zoster)
■ 帯状疱疹とは
❑ 日本人の多くが、水痘・帯状疱疹ウイル
ス(varicellazoster virus : VZV)に感染
し「水痘(水ぼうそう)」として発症しま
す(国立感染症研究所感染症疫学センタ
ー,IASR.2018).
❑ 「水ぼうそう」にかかっていなくても、すでに
体内にウイルスが潜んでいる場合もあります.
❑ 「水ぼうそう」が治った後も、水痘・帯状疱疹ウイルスは神経節内に
潜んでいます(潜伏感染).抵抗力(免疫力)が落ちると、ウイルスが
再び活動を再開し「帯状疱疹」を発症します.
■ 帯状疱疹の原因・特徴
❑ 加齢、疲労、ストレスなど、免疫力が低下した
時にウイルスが再び活動、増殖し、帯状疱疹に
なると考えられます.
❑ 帯状疱疹は、50歳を境に急激に増加します[
外山望:帯状疱疹大規模疫学調査「宮崎スタデ
ィ」].
❑ 女性に多いとされています.
❑ 近年20~40歳代の若年層で発症率が増加しています.
❑ 加齢,ストレス,過労,怪我や病気が誘因となります.しかし免疫機能
は90%以上で正常とされています.
■ 帯状疱疹の症状・好発部位
❑ 初期症状
➢ 皮疹出現に先行し、数日~数日間にわたり痛み違和感等が出現します.
➢ 「ヒリヒリ」,「ピリピリ」,「チクチク」といった痛みを感じます.
❑ 進行症状
➢ 「湿疹」および「水ぶくれ」が出現します.
主に体の片側にみられ、徐々に痂皮(かさぶた)
になり、3~4週間で落ち着きます.
➢ 稀に皮疹を全く伴わない帯状疱疹(zoster
sine herpete)も存在します.
➢ 帯状疱疹は、健康な人に帯状疱疹としてうつることはありません.た
だし、水ぼうそうにかかったことのない乳幼児などには、水ぼうそうと
してうつる場合があります。帯状に「水ぶくれを伴う発疹」が出現し、
「ジンジン」、「ピリピリ」、「ズキズキ」「チクチク」「キリキリ」
といった痛みを感じます.
❑ 好発部位
主に上半身の片側に認められ、帯状にでることから帯状疱疹とよばれ
ています.体幹がもっとも多く、次に顔面が多いとされています.
■ 帯状疱疹と悪性疾患
➢ 複数箇所に発症した場合や、両側に発症した場合は、悪性腫瘍の存在を
疑います.
➢ 帯状疱疹発症時に、悪性疾患を念頭に診察すれば、それ以上の検索は
必要ないとされています[South Med
J. 1995].
➢ 65歳以上の女性では大腸癌が多いという報告もありますが,積極的に
検索を要するほどではないとされています[Br J Gen Pract. 2005].
■ 帯状疱疹の診断方法
➢ 一般的には,痛み,皮膚所見(発赤や水疱)などの
臨床症状で判断します.
➢ 塗抹標本や抗VZVモノクローナル抗体による
ウイルス抗原の検出を行うこともあります.
■ 帯状疱疹の治療方法
発症早期(症状出現から72時間以内)に抗ヘルペスウイルス薬を使用することが推奨されます.その結果、治癒期間を短縮し、合併症の発症を抑えます.
❑ 核酸アナログ
➢
ACV(アシクロビル,VACV(バラシクロビル),PCV(ペンシクロビル),
FCV(ファムシクロビル),Ara-A(ビダラビン)
➢ 腎排泄性であり、腎機能に応じた用量調節が必要.
➢ 一日3~5回の内服が必要.
❑ AMNV(アメナリーフR)
➢ 一日一回の内服.
➢ 胆汁排泄であり、腎機能に応じた用量調節の必要がありません.
➢ 併用禁忌:リファンピシン(結核などに使用する薬です)
➢ 併用注意:クラリスロマイシン,リトナビル,エファビレンツ,ニフェジ
ピン,リファンピシン,ミダゾラム,ブロチゾラム,ファノバルビタール,
カルバマゼピン,シクロスポリン,グレープフルーツジュース,セイヨウ
オトギリソウ含有食品
❑ 鎮痛剤
➢ 非オピオイド鎮痛薬:ロキソプロフェン,アセトアミノフェン
➢ プレガバリン(リリカ),ミロガバリン(タリージェ)
➢ オピオイド鎮痛薬
➢ トラマドール
❑ 抗うつ薬
➢ アミノトリプチン(トリプタノール),ノリトリプチン(ノリトレン),
デュロキセチン(サインバルタ),
❑ 神経ブロック
➢ PHN など強い痛みが持続する場合には、神経ブロックなどの治療を
行います.
■ 帯状疱疹と合併症
❑ Hutchinson徴候
➢ 鼻尖部に皮疹が出現した場合は、眼合併症をおこす可能性が高いです
❑ 神経麻痺
➢ 上肢麻痺,下肢麻痺,横隔神経麻痺,腹壁麻痺,膀胱直腸障害など.
皮疹発症直後~3ヵ月で発症し、多くは12か月以内に改善するとされて
います[J Bone Joint Surg Br. 1969〕.
➢ 外眼筋麻痺は、皮疹と反対側におこることがあります
[Br J Ophthalmol. 1977].
❑ 帯状疱疹後神経痛
➢ 帯状疱疹の治癒後にも続く痛みです.
➢ 高齢(50歳以上)女性、重症例(広範囲)、治療
開始時期の遅延などで多いとされています.
➢ 「焼けるような」「電気が走るような」など
耐えがたい痛みであり、治癒するまで長期間
(3ヵ月以上)を要します.
神経障害性疼痛の特徴(小川節郎:ペインクリニック2010)
1.針で刺されるような痛み
2.電気が走るような痛み
3.焼けるようなヒリヒリする痛み
4.しびれの強い痛み
5.衣服の擦れや冷風で痛みが走る
6.疼痛部位の感覚低下や知覚過敏
7.疼痛部位のむくみや偏食
■ 帯状疱疹と予防方法
❑ 50歳以上の帯状疱疹未罹患者は、積極的に帯
状疱疹予防ワクチンの接種を実施
❑ 帯状疱疹の再発 : 帯状疱疹は数~15%
程度の人に再発するとされています.
❑ 再発時は、症状軽微でありPHNへの移行も少
ないとされています.
❑ 帯状疱疹はワクチンで予防できます.50歳以上の方は時期を問わず
対象です.
❑ ワクチンによる帯状疱疹予防効果は、統計上8年とされてます
(ZOSTAVAXR成績から)
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