■ 慢性腎臓病(CKD)と栄養・食事
◇ 喫 煙
❑ CKD患者にたいする禁煙効果を検証した臨床試験は見出せ
ませんが、禁煙の有用性は示唆されると考えられてます。
❑ CKD進行/発症/死亡リスクを抑制するために、CKD患者
の禁煙は推奨されます(CKD診療 ガイドライン2018:推
奨B1)。
❑ 禁煙のタイミングおよび禁煙期間については不明です(10
年以上の禁煙であればCKD進展リスクを軽減できる可能性)。
◇ コーヒー
❑ コーヒーにはカフェインなど抗酸化作用や抗炎症作用を示す
物質が豊富に含まれており、CKD進行の抑制効果が期待さ
れています。
◇ タンパク制限
❑ CKDの進行抑制に、たんぱく質摂取量を制限することが推
奨されます【B1】。
❑ たんぱく質制限を行う場合には,十分量に摂取エネルギーを
確保することが必要です。
❑ とくに高齢者は食欲が低下していることが多く、低蛋白食に
よりサルコペニア、フレイル、タンパクエネルギー消費状態
など、低栄養・消耗状態が進展する可能性があります。
❑ 食事摂取量や栄養状態の定期的なモニタリングを行い、食事
療法が適切に行われいるか評価する必要があります。ガイドライン2023では、
一律のたんぱく質の目標値は設定されておらず、個別性が考慮されています。
◇ カリウムの管理
❑ 総死亡,CVDのリスクを低下させる可能性があり、CKD患
者の血清K値4.0~5.4 mEq/Lに管理することを推奨します
【C1】。
❑ 血清K値が高い場合
・レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬などの
減量・中止。
・代謝性アシドーシスの補正,食事指導・排便管理。
・K吸着薬
❑ 血清K値が低い場合
・ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬・K吸着薬など)の減量/中止
・野菜・果物の制限を支持する報告はありませんが、積極的な野菜・果物
摂取を容認することが勧められるわけではありません。
・現状のエビデンスからは画一的な野菜・果物の制限は勧められません。
◇ 飲水量
❑ 保存期CKD患者では,飲水量を増やしても生命予後の改善や
腎保護効果は期待できないため、通常よりも意図的に飲水量
を増やすことは行わないよう提案されます【B2】。
❑ CKD患者の適切な飲水量については明確ではありませんが、
CKDステージG3/4では,1日の飲水量1~1.5 Lで末期腎不
全のリスクが少なくなる可能性があります。
❑ 飲水量1
L/日未満の少ない飲水習慣では末期腎不全のリスクが上昇する可能
性があり注意が必要です。
◇ 食塩制限
❑ 高血圧と尿蛋白が抑制されるため、6 g/日未満の食塩摂取制
限を推奨します。ただし,ESKD、総死亡、CVDイベントに
対する効果は不明です【C1】。
❑ 下限値の設定値はありません(エビデンスなし)。
◇ アシドーシスと食事
❑ 代謝性アシドーシスを有するCKD患者では,内因性酸産生量を抑制し、腎
機能悪化を 抑制する可能性があるため、アルカリ性食品(野菜や果物の摂
取など)による食事療法を提案します【C2】。
❑ 高カリウム血症に注意が必要です
◇ アルコール
❑ CKD進展/死亡に関する飲酒のエビデンスは十分ではあ
りませんが、節度ある飲酒(1日20 g程度のアルコール
摂取)は提案されています。
❑ CKDの発症リスクとしての飲酒が抑制的に効果する可能
性は肥満度に依存しています。
エタノール20gの目安 |
ビール(5%) |
500ml |
日本酒(15%) |
1 合 |
ワイン(12%) |
200ml |
ウイスキー(43%) |
ダブル |
焼 酎(25%) |
1/2杯 |
缶チューハイ(5%) |
500ml |
■ 慢性腎臓病(CKD)と生活習慣
◇ 口腔ケア
❑ 口腔不健康状態は、CKDステージの悪化に伴い漸増し、フレ
イルや死亡率上昇との関連も示唆されるため、今後の検証結
果が待たれます(エビデンスは乏しいのが現状)。
◇ 便 秘
❑ 腸内細菌叢の乱れが、尿毒症物質の増加や全身臓器の合併症
に関与している可能性が示唆されています。
❑ 便秘のCKDリスク関係は、今後の介入試験に期待されると
ころです。
◇ 睡眠障害
❑ CKD患者において適度な睡眠は,透析導入やCVDの発症を
減らす可能性があり、適度な睡眠時間を確保することを提案
されます【D2】。
❑ 論文数が少なく、適切さについての確信は限定的です。
◇ 肥 満
❑ 肥満を伴わない保存期CKD患者において、日常的な運動は蛋
白尿増加をもたらすことはなく、腎機能や身体的QOLの改善
をもたらす可能性があり、年齢や心肺機能を考慮しながら可
能な範囲で行うことが提案されます【2C】。
■ 慢性腎臓病(CKD)と予防接種
❑ 保存期CKD患者に感染症予防対策として、B型肝炎/インフ
ルエンザウイルス/肺炎球菌に対するワクチン接種を実施す
ることを強く推奨します【1D】。
❑ CKDはSARS-CoV-2感染症重症化因子の1つであり、感染
予防対策は特に重要です。
❑ 他人から1~2 m以上の距離確保、マスク着用が有用です。
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