■ 糖尿病の運動療法
有酸素運動
❑ ウォーキング・ジョギング・水泳・自転車などの全
身運動です。
❑ 一般に中等度の強度を行いましょう(ウォーキング
やジョギングは血糖コントロールを改善します)。
❑ 糖尿病患者の脂質異常症改善にも有効です [推奨グ
レードA]
❑ 運動時心拍数
・50歳未満で100~120拍/分
・50歳以降で100拍/分以内
❑ 自覚的運動強度 「ややきつい」または「楽である」程度。
❑ 1週間の合計150分程度を目標としましょう(週に3~5回)。
❑ 運動しない日が2日以上続かないようにしましょう(運動の血糖降下作用は
48時間程度継続します)。
❑ 有酸素運動の実施タイミング:食後であれば、食後高血糖の改善が期待でき
ます。
レジスタンス運動
❑ ダンベル、バーベル、スクワット、踵上げ、ランジ
、足上げ、上体起こし、腿上げなど。
❑ 有酸素運動と併用することをお勧めします。
❑ 8~10種目のレジスタンス運動を日替わりで行いま
しょう。
❑ 1種目につき、10~15回を1セットとして1~3セット繰り返しましょう。
❑ 種目・セット数などを徐々に増やして実施しましょう。
❑ 下半身の筋肉は、全身の筋肉の7割を占めています。
❑ 家事やテレビを見ながら自宅で取り組める運動を、バランス能力や筋力レベル
に合わせて安全に行いましょう。
生活習慣の改善
❑ 身体活動量(運動+生活活動量)を増加させましょう。
❑ 日常の座位時間が長くならないようにして、合間に軽い活動を行いましょう。
❑ 30分以上座位を継続しないように、歩行や軽い身体活動を行うことが推奨さ
れます。30分を超えたら、立ち上がり軽い運動を行うことが推奨されます。
■ 糖尿病の薬物療法
糖尿病の飲み薬は、10系統に大別されます。
インスリン分泌を促進薬
インスリン分泌を促進する薬です。
・血糖依存性インスリン分泌促進薬
➢DPP-4阻害薬
➢GLP-1受容体作動薬
➢GIP/GLP-1受容体作動薬
➢イメグリミン
・血糖非依存性インスリン分泌促進薬:
➢スルホニル尿素(SU)薬
➢速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
インスリン抵抗性改善薬
インスリン抵抗性を改善し、インスリンが効きやすくする薬です。
➢チアゾリジン薬
➢ビグアナイド薬
糖吸収抑制薬
糖の吸収を遅らせて血糖の急な上昇を抑える薬です。
➢α-グルコシダーゼ阻害薬
尿中排泄促進薬
体の中の糖を尿中に排出させる薬です。
➢SGLT2阻害薬
◇ DPP-4阻害薬
・シタグリプチンリン酸塩水和物(グラクティブ®、ジャヌビア®)
・ビルダグリプチン(エクア®)
・アログリプチン安息香酸塩(ネシーナ®)
・リナグリプチン(トラゼンタ®)
・テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(テネリア®)
・アナグリプチン(スイニー®)
・サキサグリプチン水和物(オングリザ®)
週1回(1日1回製剤と効果に差はなく、利便性や融通性に優れてます)
・トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック®)
・オマリグリプチン(マリゼブ®) |
【 特 徴 】
➢食後のインスリン分泌を促進、グルカゴン分泌を抑制し、血糖降下作用を発揮
します。
➢単剤では低血糖を起こしにくいが、SU剤やインスリンとの併用では低血糖を
起こす可能性があります。
➢リナグリプチン・テネリグリプチン臭化水素酸・塩水和物以外は、腎機能に応
じて用量調節をする必要があります。
【 注意点 】
➢食前食後どちらでも内服可能です。
➢急性膵炎や水疱性類天疱瘡などの発症に注意が必要です。
◇ イメグリミン
【 特 徴 】
➢グルコース濃度依存性インスリン分泌促進作用+インスリン抵抗性改善作用に
より、血糖降下作用を発揮します。
【 注意点 】
➢メトホルミンと類似した構造を有するも、乳酸アシドーシスを起こす危険性は
低いと報告されています。
➢eGFR が45ml/分/1.73m2の場合は、有効性や安全性が確認されておらず、推
奨されません。
◇ GLP1受容体作動薬
・リラグルチド(ビクトーザ®)
・1日1回投与する自己注射剤
・エキセナチド(バイエッタ®)
* 1日2回投与する自己注射剤
・リキシセナチド(リキスミア®)
* 1日1回投与する自己注射剤
・徐放型エキセナチド(ビデュリオン®)
* 週1回投与する自己注射剤
・デュラクルチド(トルリシティ®)
* 週1回投与する自己注射剤
・セマグルチドリベルサス(リベルサス®)
* 経口薬
|
【 特 徴 】
➢皮下注射により投与する薬です.
➢食後のインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制することにより、血糖
降下作用を発揮します。
➢単剤では低血糖を起こしにくいが、SU剤やインスリンとの併用では低血糖を起
こす可能性があります。
➢リキシセナチド(リキスミア®)・徐放型エキセナチド(ビデュリオン®)・デュ
ラクルチド(トルリシティ®)はインスリンと併用可能。
➢リラグルチド(ビクトーザ®)・デュラクルチド(トルリシティ®)は大血管症
の発症を有意に抑制します。
➢大血管症や腎症の進行抑制に有効です。
➢少量から開始することにより,胃腸障害を避けることができます。
【 注意点 】
➢食前食後どちらでも内服可能です。
➢急性膵炎の発症に関しては否定的です。
➢消化器症状として、便秘、吐き気、嘔吐、下痢などの症状がみられる場合があ
ります。
◇ GIP/GLP1受容体作動薬
・チセぜパチド(マンジャロ®)
* 週1回投与する自己注射剤
|
【 特 徴 】
➢グルコース濃度依存的にインスリンを分泌し、グルカゴン分泌を抑制します。
【 注意点 】
➢消化器症状として、便秘、吐き気、嘔吐、下痢、食欲減退、鼻咽頭炎、SU薬お
よびインスリンとの併用では重症低血糖が報告されています。
◇ SU薬
・グリベンクラミド(ダオニール®、オイグルコン®)
・グリクラジド(グリミクロン®)
・グリメピリド(アマリール®)など
|
【 特 徴 】
➢インスリン分泌を促進し、強い血糖降下作用を発揮します。
➢微小血管症抑制のエビデンスがあります。
➢インスリン抵抗性の強い患者(高度の肥満など)にはよい適応ではありません。
【 注意点 】
➢少量でも低血糖を起こすことがあります。
➢高齢者では低血糖の危険性が高いため、少量からの投与開始が勧められます。
➢腎機能・肝機能が低下している場合は、低血糖をきたす危険性が高く、注意
が必要です。
➢長期使用にて、効果が減弱してくることがあります。
◇ グリニド薬
・テグリニド(ファスティック®、スターシス®)
・ミチグリニドカルシウム水和物(グルファスト®)、
・レパグリニド(シュアポスト®)など |
【 特 徴 】
➢インスリン分泌を速やかに促進し、食後の高血糖を是正します。
➢短時間で作用が消失し、低血糖の危険性は少ないとされています。
➢食後高血糖のよい適応です。
【 注意点 】
➢食直前の服用が必要です(5~10分程度前)。
➢肝機能・腎機能障害のかたは、低血糖の危険性が高まります。
◇ チアゾリジン薬
【 特 徴 】
➢末梢組織でのインスリン抵抗性を改善し、血糖降下作用を発揮します。
➢肝臓からのブトウ糖放出を抑制し、血糖降下作用を発揮します。
【 注意点 】
➢体液貯留作用による浮腫が認められ、心不全では禁忌です。
➢膀胱癌治療中の場合は、使用を避けるべきです。
➢高齢女性では骨折を起こしやすい可能性があります。
◇ ビグアナイド薬
・メトホルミン塩酸塩(グリコラン®、メトグルコ®)
・ブホルミン塩酸塩(ジベトス®) |
【 特 徴 】
➢肝臓からのブドウ糖放出を抑制します。
➢筋肉を中心とした末梢組織でのインスリン感受性を促進します。
➢消化管からの糖吸収を抑制します。
➢2型糖尿病では、大血管症抑制作用を有します。
➢単独使用では低血糖を少なく、体重も増えにくいとされてます。
【 注意点 】
➢まれに重篤な乳酸アシドーシスを起こす危険性があります。
➢少量から開始することにより,胃腸障害を避けることができます。
➢長期使用でビタミンB12が不足する場合があります。
【 禁 忌 】
➢腎機能低下(eGFR 30ml/分/1.73m2未満)
➢胃腸障害(脱水が懸念される嘔吐下痢)
➢過度のアルコール摂取
➢高度の心血管・肺機能障害
➢外科手術前後
【 慎重投与 】
➢高齢者(75歳以上)
➢軽度~中等度の肝障害
➢利尿剤・SGLT阻害薬併用の場合。
➢eGFR が30~60ml/分/1.73m2の場合は、造影検査の前後で投与中止が
必要です。
◇ αグルコシダーゼ
・アカルボース(グルコバイ®)
・ボグリボース(ベイスン®
・ミグリトール(セイブル®)
|
【 特 徴 】
➢腸管での糖吸収を遅らせ、食後の高血糖や高インスリン血症を抑制します。
➢効果は弱いが、他の経口血糖降下剤との併用に優れています。
➢必ず毎食直前に服用することが必要です。
➢血糖コントロール改善に際して体重増加がしにくい。
【 注意点 】
➢必ず食直前に服用しましょう。
➢腹部膨満感、放屁の増加、下痢がしばしばみられます。
➢まれに肝機能障害がみられます。
◇ SGLT2阻害薬
・イプラグリフロジン(スーグラ®)
・ダパグリフロジン(フォシーガ®)
・ルセオグリフロジン(ルセフィ®)
・トホグリフロジン(アプルウェイ®)
・カナグリフロジン(カナグル®)
・エンパグリフロジン(ジャディアンス®) |
【 特 徴 】
➢近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制し、尿糖排泄を促進し、血糖低下作用
を発揮します。
➢体重低下が認められます。
➢低血糖の可能性は低い。
【 注意点 】
➢中等度の腎機能低下(eGFR が30ml/分/1.73m2未満の場合)は、血糖降下作
用が期待できません。
➢性器感染症の頻度が増加します。
➢75歳以上あるいは利尿剤併用中の場合は、脱水に注意を要します。
■ 糖尿病と低血糖
❑ 血糖値が70mg/dL未満になると低血糖と診断します
❑ 低血糖の際は、速やかにブドウ糖など糖質の経口接
種(ブドウ糖として5~10g)や注射(ブドウ糖として
10~20g)が必要です。
❑ 低血糖の診断
➢低血糖症状があってもなくても、血糖値が70
mg/dLより低い場合。
➢血糖値が70mg/dLより高くても、低血糖症状のある場合。
血糖値 |
症状 |
交換神経症状
血糖値70~50mg/dL
(中枢神経症状前の警告です) |
振戦・動悸・悪心
不安感・熱感・空腹感
頭痛・振戦・ 動悸
悪心・不安感・熱感
空腹感・頭痛
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中枢神経症状
血糖値50mg/dL程度 |
眠気・脱力・めまい
疲労感・集中力低下
霧視・見当識低下
不安・抑鬱・不機嫌
大脳機能低下
|
血糖値30mg/dL以下 |
痙攣・意識消失
一過性片麻痺
小児ではてんかん発作
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■ 糖尿病とシックデイ
◇ インスリンの場合
❑ 脱水予防のため、十分に水分を摂取しましょう。
❑ 中間型や持効型インスリンは、継続を原則とします。
❑ 追加インスリンは、食事量や血糖値を参考に調節します。
❑ 頻回に血糖値を測定しましょう。
❑ 脱水予防のため、十分に水分を摂取しましょう。
◇ 飲み薬の場合
❑ SU薬・グリニド製剤:食事摂取不良の場合は、医師に相談して下さい。
❑ α-グルコシダーゼ阻害薬:消化器症状が強いときは、中止して下さい。
❑ ビグアナイド薬:シックデイの時は中止して下さい。
❑ チアゾリジン薬:シックデイの時は中止可能です。
❑ インクレチン関連薬:シックデイの対応はさだまってません。
❑ SGLT2阻害薬薬:シックデイの時は中止しましょう。
❑ シックデイの時で対応に悩む場合は、電話などで主治医と相談してください。
❑ 医療機関へ受診をする状態
➢発熱や嘔吐・下痢が強いとき
➢24時間にわたって食事がとれない/著しく少ない
➢血糖値が350mg/dL以上が続くとき
➢意識の状態に変化があるとき
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