■ 糖尿病の食事療法
◇ 食事の摂り方
❑ 1日3食が糖尿病予防に有効です。
❑ 野菜やタンパク質などを先に摂取し、その後炭水化 物を摂ることをお勧めします。
❑ 就寝前の夜食は、肥満や血糖コントロール不良の原
因となります。
◇ 一日のエネルギ摂取量
❑ 目標体重に見合う、一日総エネルギー摂取量を設定
します。
❑ 目標とする体重は患者の年齢、病態によって異なる
ことを考慮し、個別化を図ります。
❑ 総エネルギー摂取量の目安を定め、状況をふまえ、
適宜変更します。
1日の総エネルギー摂取量(kcal)=
目標体重(kg)(注1)×エネルギー係数(kcal / kg)(注2)
|
(注1)「目標体重(kg)の目安」:総死亡が最も低いBMI は年齢によって
異なり、一定の幅があることを考慮し、以下の式か ら算出します。
➢65歳未満: [身長(m)]2×22
➢65歳~74 歳: [身長(m)]2×22~25
➢75 歳以上: [身長(m)]2×22~25*
[75 歳以上の後期高齢者では現体重に基づき、フレイル、ADL 低下、
併発症、体組成、身長の短縮、摂食状況や代謝状態の評価を踏まえ、
適宜判断します。
(注2)「身体活動レベルと病態によるエネルギー係数(kcal/kg)」
①軽い労作 (大部分が座位の静的活動):25~30
②普通の労作(座位中心だが通勤・家事、軽い運動を含む):30~35
③重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある):35~
■ 栄養素の配分
❑ エネルギーのもととなる三大
栄養素は、炭水化物(糖質)・
たんぱく質・脂質です。
❑ 糖尿病予防・管理のための適
正比率を定める十分なエビデ
ンスは乏しく栄養バランスの
目安は、健常人の平均摂取量
に基づいて勘案します
[参考]
➢炭水化物50~60%。
➢タンパク質20%以下。
➢残りを脂質(脂質が25%を超
える場合は、多価不飽和脂肪
酸を増やす)。
➢食物線維は糖尿の改善に有効であり、1日20gを摂取するしましょう。
◇ 炭水化物
❑ 炭水化物(糖質+食物繊維)は脳が消費するため、最
低130gは必要とされています。
❑ 2型糖尿病コントロールのため、6~12ヶ月の短期間
であれば、緩やかな炭水化物制限は弱く推奨されま
す。 [推奨グレードB]
❑ 炭水化物は体を動かすためのエネルギー源として重要な栄養素です。また、
炭水化物を抜くことで、満腹感が得られず、肉や魚などのおかずを過剰摂取
し、タンパク質や脂質を摂りすぎてしまうこともあります。2型糖尿病コン
トロールのため、低GI食(GI値の低い食品)摂取エビデンスの確実性は低い
ですが、個々人の嗜好や習慣にあわせて選択でき、弱く推奨されます。
[推奨グレードB]
◇ 低GI食
❑ 高GI食:GI値の高い食品は、血糖値が上昇が急激であり、インスリンも
大量に分泌されます。血糖値は低下しますが、脂肪産生亢進/脂肪分解抑
制も起こります(肥満の原因)。
❑ 低GI食:GI値の低い食品(肉・魚などのタンパク質、乳製品、野菜)は、
血糖値の上昇が緩やかなため、インスリン分泌も軽度です。
◇ 脂 質
❑ 一価・多価不飽和脂肪酸と食物繊維の摂取や、適正
なエネルギー制限が、強く推奨されます。
[推奨グレードA]
[ 参 考 ]
➢飽和脂肪酸 : 乳製品、肉(動物性脂肪)や、熱
帯植物の油脂(ココナッツ油、やし油など)に多く含まれています。
➢多価不飽和脂肪酸(n-3系やn-6系など) : 植物油や魚に多く含
まれ、体の中で合成できないため食べ物からしか摂れません。
■ アルコール・甘味料・塩分・食物線維
◇ 嗜好飲料
❑ 適量の飲酒は、糖尿病予防にはなりません。
❑ 甘味料(ショ糖、果糖、ブドウ糖など)、人工甘味料添
加のジュースや果物ジュースは、2型糖尿病の発症リ
スクを上昇させます。
❑ コーヒー、ココア製品、茶類の習慣的摂取は、2型糖尿病
の予防に有効です。
❑ 果物は、そのまま食べると2型糖尿病の発症リスクを低下させますが、ジュー
スで飲むと2型糖尿病の発症リスクを上昇させます。
◇ 喫 煙
❑ 2型糖尿病の独立した危険因子です。非喫煙者と比
べたリスクは、喫煙本数10本未満で21%、10~19
本で34%、20本以上で57% 増加します。
◇ アルコール
❑ 適量の飲酒でも、糖尿病予防にはなりません。
❑ 25g/日までの摂取なら適当と考えられています(ビ
ール500ml、日本酒1合程度)。
❑ 発泡酒など炭水化物(糖質)を含有している飲料は、
注意が必要です.
[炭水化物含有量]
日本酒一合:6.48g ビール500ml:15.5g 発泡酒500ml:18g
ワイン200ml:8g ウイスキー:0g 焼酎:0g
❑ インスリン注射中の飲酒は、低血糖(急性効果)をおこす可能性があり注意が
必要です。
◇ 甘味料
❑ 非栄養性甘味料:血糖コントロールに対する影響は十分に確認されていません。
❑ 非栄養性甘味料は、血糖に関し不明な点が多く、否定はできないが今後の検討
がまたれます。
◇ 食 塩
❑ 現時点では、糖尿病に対する食塩摂取量についての
推奨基準はありません.ただし、糖尿病性腎症を合
併している場合は、6.0 g/日未満が推奨されます.
参 考
[日本人の食塩摂基準2020年版]
➢男性7.5 g/日未満
➢女性6.5 g/日未満
[日本高血圧学会]
・高血圧合併例は、7.5 g/日未満
◇ 食物繊維
❑ 水溶性食物繊維は、2型糖尿病の血糖コントロー
ルを改善させる可能性があり弱く推奨されます。
[推奨度B]
➢水溶性食物繊維:糖を包み吸収しにくくするので
、血糖値の上昇を緩やかにします。野菜から食べ
るようにしましょう。
➢不溶性食物繊維:水に溶けず、水分を吸収して膨らむ性質を持ちます。
便の量を増やして腸を刺激し、排便を改善させる働きがあります。
野菜に含まれる食物繊維の量 (100g中)
|
食材名 |
水溶性食物繊維 |
不溶性食物繊維 |
ゴボウ
オクラ
にんじん
西洋カボチャ
にら
しゅんぎく
しそ
なす
ほうれんそう
|
2.7g
1.6g
1.4g
1.3g
1.3g
1.1g
0.8g
0.3g
0.7g
0.7g
|
3.4g
3.6g
1.2g
3.9g
2.2g
2.6g
6.5g 1.2g
1.4g
2.1g
|
きのこに含まれる食物繊維の量 (100g中)
|
食材名 |
水溶性食物繊維 |
不溶性食物繊維 |
しろきくらげ 乾
干し椎茸
あらきくらげ
まいたけ
えのき茸(瓶詰め)
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19.3g
3g
2.4g
1.5g
1.1g
|
49.4g
38.0g
26.2g
39.4g
3.0g |
穀物類に含まれる食物繊維の量 (100g中)
|
食材名 |
水溶性食物繊維 |
不溶性食物繊維 |
大麦(押麦)
ライ麦パン
コッペパン
ロールパン
五穀米
|
6.0g
2.0g
1.0g
1.0g
1.0g
|
3.6g
3.6g
1.0g
1.0g
4.2g
|
芋類に含まれる食物繊維の量 (100g中)
|
食材名 |
水溶性食物繊維 |
不溶性食物繊維 |
こんにゃく(製粉)
さといも
じねんじょ
じゃがいも ながいも
|
73.3g
0.8g
0.6g
0.4g
0.2g
|
1.8g
1.5g
1.4g
0.8g
0.8g
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果物に含まれる食物繊維の量 (100g中)
|
食材名 |
水溶性食物繊維 |
不溶性食物繊維 |
あんず(乾)
いちじく(乾)
プルーン(乾)
ブルーベリー(乾)
マンゴー(生)
イチゴ(生)
ブルーベリー(生)
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4.3g
3.4
3.5g
3g
0.6g
0.5g
0.5g
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5.5 g
7.3g
3.8g
14.6g
0.7g
0.9g
2.8g
|
参照:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版」
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