■ 糖尿病
糖尿病治療の目標
❑ 高血糖に起因する代謝異常を改善し、健康な人とかわらない生活の質(QOL:Quality of Life)を保ち、健康な人とかわらない寿命を全うすることを目的とします. そして、糖尿病に特徴的な併発症の発症および増悪を抑制します.
[特徴的な併発症]
・網膜症・腎症・神経障害
・動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞・壊疽・
・抵抗力の低下による感染症の合併
・膵臓癌や肝臓癌など悪性腫瘍の合併
血糖値が高いまま放置すると、徐々に特徴的な併発症を発症します.
糖尿病は、症状がでにくい病気ですが、ひとたび併発症が出ると、感覚が
鈍くなる、感染が起きやすくなる、視力の低下などの症状が進行します.
また、腎臓の機能が悪化すると人工透析が必要に場合があり、生活が制限
されます.
■ 糖尿病の検査値について
HbA1c
❑ HbA1c : 過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映しています.
❑ 血糖値 : 空腹時や食後.
日本糖尿病学会編・著 糖尿病治療ガイドライン2019 25頁 文光堂 2019 より改変
治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、
高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾患なども考慮し
個別に設定します. 加齢に伴い重症低血糖の危険性が高くなること
に十分注意します.
高齢者のコントロール目標
「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標値」 日本糖尿病学会・日本老年医学会
治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、高齢者では認知機能
や基本的 ADL、手段的 ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する。ただし、加齢に伴って
重症低血糖の危険性が高くなることに十分注意する.
注 1:認知機能や基本的ADL(着衣、移動、入浴、トイレの使用など、手段的 ADL:買い物、
食事の準備、服薬管理、金銭管理など)の評価に関しては、日本老年医学会のホームペ ージ
を参照する.エンドオブライフの状態では、 著しい高血糖を防止し、それに伴う脱水や急性
合併症を予防する治療を優先する.
注 2:高齢者糖尿病においても、合併症予防のための目標は 7.0%未満である.ただし、適切な 食
事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法の副作用なく達成可能な場 合の目標
を 6.0%未満、治療の強化が難しい場合の目標を 8.0%未満とする.下限を設けな い.カテゴ
リーIII に該当する状態で、多剤併用による有害作用が懸念される場合や、重 篤な併存疾患を有
し、社会的サポートが乏しい場合などには、8.5%未満を目標とするこ とも許容される.
注 3:糖尿病罹病期間も考慮し、合併症発症・進展阻止が優先される場合には、重症低血糖を予防する
対策を講じつつ、個々の高齢者ごとに個別の目標や下限を設定してもよい. 65 歳 未満からこれ
らの薬剤を用いて治療中であり、かつ血糖コントロール状態が図の目標や下限を下回る場合には、
基本的に現状を維持するが、重症低血糖に十分注意する.グリニ ド薬は、種類・使用量・血糖値
等を勘案し、重症低血糖が危惧されない薬剤に分類される 場合もある.
グリコアルブミン(GA)
基準値11~16%
アルブミン(血中タンパク質の主要成分)とブドウ糖と結合の割合を
調べる検査です.過去約2週間の血糖コントロールをあらわす指標と
して使われます.短期間の血糖変化や、短時間の食後高血糖をとらえ
る検査です(過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映しています).
1,5AG
基準値 14μg/mL
食品に含まれる1,5-AGは、栄養素としての役割はなく、尿糖と一緒に
尿中に排泄されます.数値が低いほど血糖コントロール不良と判断し
ます.過去数日間の血糖コントロールの指標に用います.
空腹時Cペプチド
❑ インスリン依存状態 : 空腹時Cペプチド 0.6 mg / ml 未満
❑ インスリン非依存状態 : 空腹時Cペプチド:1.0 mg / ml 以上
■ 糖尿病と生活習慣病
高血圧症
❑ 糖尿病の方の目標値:130 / 80mmHg未満.
❑ 脳血管障害・冠動脈疾患のある方:
:140/90mmHg未満.
❑ 診察室血圧が130/80mmHg以上で治療を
開始します. [推奨グレードB]
❑ 高血圧症は、大血管症・微小血管症の危険因子
です.
❑ 2型糖尿病性網膜症の発症、進行を抑制する上で有効です
[推奨グレードA]
❑ 降圧剤の推奨はACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、サイ
アザイド系利尿剤が推奨されます.しかし、微量アルブミン尿
や蛋白尿が併存する場合は、ACE阻害薬、ARBが推奨されます.
[推奨グレードB]
脂質異常症
❑ LDLコレステロール:目標値120 mg/dL未満
❑ 冠動脈疾患のある場合:100 mg/dL未満
❑ 冠動脈疾患発症の危険因子ある場合:
目標値70 mg/dL未満
❑ 冠動脈疾患の危険因子とは
・家族性高コレステロール血症
・非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患
・網膜症や腎症の合併
・血糖コントロールl不良状態
・メタボ 喫煙
❑ HDLコレステロール:目標値40 mg/dl以上
❑ 中性脂肪(早朝空腹時):目標値150 mg/dl未満
❑ 2型糖尿病を合併した脂質異常症に対し、フェノフィブラートは、
網膜症の進行抑制に有効である可能性があります(推奨グレードB)
❑ 高LDL血症は、冠動脈疾患の強い危険因子です.
❑ 高中性脂肪血症は、細小血管症の危険因子です.
❑ 低HDLコレステロール血症は、細小血管症の危険因子です.
❑ スタチン系薬剤は、LDL-C血症に対し第一選択薬です[推奨
グレードA].エゼチミブの併用によりCVD発症が抑制されま
す[推奨グレードB].
喫煙
❑ 喫煙は、2型糖尿病の独立した危険因子
です.
❑ 受動喫煙も、2型糖尿病の発症リスクを
増加させます.
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